シンポジウム・ワークショップ・公開講座

日韓がんワークショップ

第18回 日韓がんワークショップを終えて

2013年11月29-12月1日、岐阜・都ホテルにおいて第18回日韓がんワークショップが開催された。今回のワークショップは、「前立腺癌・がん転移の研究の発展」をテーマとして行なわれた。

第18回日韓がんワークショップ


プログラムコーディネーター

日本: 牛島 俊和(国立がん研究センター)
  大島 正伸(金沢大学)
韓国: Dr. Seung-Hoon Lee (韓国National Cancer Center)
  Dr. Yong-Sang Song (ソウル大学がん研究所)

オーガナイザー

韓国: Dr. Eun Jung Park(韓国National Cancer Center)
  Dr. Junho Chung(ソウル大学がん研究所)
日本: 二口 充(名古屋市立大学)
  大島 正伸(金沢大学)
  牛島 俊和(国立がん研究センター)

日本側からは、がん支援総括支援活動班の支援を受けたがん研究者17名、厚労省側からの3名の合計20名が参加し、韓国側からはNational Cancer Center(NCC)およびSeoul National University(SNU)の研究者を中心に24名が参加した。 29日には情報交換会が行われ、30日は口頭発表13演題、ポスター20演題の発表および討論が行なわれ、その後の一般討論においても、韓国および日本におけるがん研究について、活発な議論が行われ、交流を深めた。

最初の「Characteristic Molecules on Prostate Cancer」のセッションでは、Youn (SNU)が、前立腺癌におけるアンドロゲンレセプターのシグナルに関与する分子に、PI3K, カベオリンが関与することを報告した。また大日方(日大)は、アンドロゲン依存性前立腺癌が、非依存性となるメカニズムに、TMPRSS2とERGのfusion geneが関与していること、さらにこれをPyrrole-imidazole polyamideを投与することで抑制されることを示した。さらにJoung(韓国がんセ)は、韓国人男性に発生する前立腺癌のSNPを検索し、PSCA, 8q24およびAMCR遺伝子のpolymorphismが前立腺癌のリスクと関連することを疫学的に示した。

次の「Pre-clinical / Clinical Topics on Prostate Cancer」のセッションでは、都筑(名古屋第二日赤)は、前立腺癌の病理組織学的診断に用いられるGleason grading systemの診断上の問題点と、臨床的な予後の予測する上での問題点を指摘した。またKim(韓国がんセ)は、韓国で行われているproton therapyのPhase II studyの治療成績を報告した。さらに二口(名古屋市立大)は、動物モデルを用いて骨微小環境における腫瘍細胞の増殖にはmicroRNA-205の発現低下が関与しており、この過剰発現株では、抗がん剤やホルモンレセプター阻害剤の感受性が増大することを報告した。

昼食後の「Stem Cell and Metastasis」のセッションでは、後藤(金沢大)は、EGF/PI3 キナーゼシグナル上の特徴的な遺伝子発現が高悪性度の乳がんの再発リスクと関連しており、この特徴をもつ腫瘍細胞は三次元培養でがん幹細胞に特徴的な形態を示すことを明らかにし、乳がんの再発リスクとがん幹細胞との関連を報告した。またLee (クリーブランド)は、Sema3AからNRPへのシグナリングが、神経膠芽腫のがん幹細胞の新生と増殖に関与し、治療標的となりえることを示した。さらにJung(Yonsei大)は、がん転移の過程で血中に検出される腫瘍細胞を、EpCAM依存性および非依存性に検出できる装置を開発し、臨床応用への可能性について説明した。

最後のセッションの「Pre-clinical Approaches to Metastasis Research」ではKim(Chonbuk大)は、大腸がんの肝転移においてAKT/mTORシグナルおよびOpa interacting proteinが関与することを示した。また落合(国立がんセ東)は、病理組織学的に腫瘍細胞は線維芽細胞と増殖する像を示す点に着目し、微小環境において微小環境由来の線維芽細胞が誘導され、腫瘍細胞の増殖を促進させることを示し、微小環境における腫瘍細胞の増殖メカニズムを明らかにした。さらにLee(Dankook大)は、大腸がんの肝転移の治療法として、CEAおよびhTERTのRNAを用いた遺伝子治療法の効果について報告した。最後に中村(がん研)は、長管骨のeSZ領域の骨軟骨前駆細胞にEWS-ETSのフュージョン遺伝子を導入すると、ユーイング肉腫が発生するモデルを確立した。同様の方法で滑膜肉腫など様々な肉腫モデルを確立し、肉腫の発生におけるフュージョン遺伝子の重要性を報告した。

また、ポスターセッションでは、日本から近藤(愛知がんセ)、山野(大阪市立大)、横平(香川大)、Han(金沢大)、上原(徳島大)、勝島(愛知がんセ)、平畑(鳥取大)、間石(北大)、町田(東大)、羅(奈良医大)らが、韓国からYoon(SNC)、Kim(SNU)、Lee(NCC)、Myung(NCC)、Park(NCC)、Kong(NCC)、Park(NCC)、Kim(SNU)、Kim(NCC)らが、大変興味深い研究内容を発表した。

今回のワークショップでは、前立腺癌の分野において、前立腺癌の進展機構、分子疫学、診断、前臨床段階の治療成績、がん幹細胞と転移、マウスモデル、腫瘍間質相互作用、転移に対する遺伝子治療法など、多岐にわたる高い水準の口演が行われ、前立腺癌および転移に関する知識を共有すると共に、活発な議論が十分に行われた。ポスターセッションでも、熱い討論が続けられるなど、ワークショップ会場は終日熱気に満ちていた。休憩時間においても、熱い討論が続けられるなど、ワークショップ会場は終日熱気に満ちていた。これまでに開催されたワークショップで確立された相互理解が、本ワークショップにおいてもさらに促進され、二国間の情報交換と研究者交流により、がん研究や治療法、予防法の開発に貢献することが期待される。

最後に、本ワークショップのコーディネートして頂いた中村卓郎先生(がん研)、大島正伸先生(金沢大)、牛島俊和先生(国立がんセ)および本ワークショップ開催にあたって支援をしていただいたがん支援総括支援活動班にこの場をお借りしまして感謝申し上げます。

(文責:二口 充)