シンポジウム・ワークショップ・公開講座

日韓がんワークショップ

第15回 日韓がんワークショップを終えて

2010年12月21-22日、韓国・仁川(Sheraton Incheon Hotel, Incheon, Korea)において第15回日韓がんワークショップが開催された。今回のワークショップは、「がん微小環境と乳がん研究の発展」をテーマとして行なわれた。


ワークショップ委員会名簿

アドバイザー:

日本
嘉山 孝正(国立がん研究センター)
韓国
Dr. Jin Soo Lee、National Cancer Center(NCC)
Dr. Jae-Gahb Park、Seoul National University(SNU)

プログラムコーディネーター:

日本
中村 祐輔(国立がん研究センター)
大島 正伸(金沢大学)
韓国
Dr. Seung-Hoon Lee (NCC)
Dr. Youg Sang Song (SNU)

オーガナイザー:

日本
牛島 俊和(国立がん研究センター)
三木 義男(東京医科歯科大学)
韓国
Dr. Byoung Se Kwon (NCC)
Dr. Junho Chung (SNU)

日本側からは、がん支援総括支援活動班の支援を受けた11名、および厚労省側からの5名の合計17名が参加し、韓国側からはNational Cancer Center(NCC)およびSeoul National University(SNU)の研究者を中心に20名が参加した。21日には韓国NCCツアー、レセプションが行われ、22日は口頭発表15演題、ポスター18演題の発表および討論が行なわれ、その後のバンケットでは、全員のショートスピーチ、韓国NCC関係者によるアトラクションなどにより交流を深めた。

「Progress in breast cancer research - 1」のセッションでは、Im (SNU)が乳癌のトランスレーショナルリサーチとしてハーセプチンで治療されたHER2陽性の転移性乳癌患者におけるABCB1、FCGR2AとFCGR3A多型性の解析結果を報告し、ABCB1多型が予測因子となることを発表した。中村(国立がんセ)は、個別化医療の実現に向けた「バイオバンク ジャパン」プロジェクトを報告し、また、GAP(国際薬理遺伝学研究連合:Global Alliance for Pharmacogenomics)が紹介され、その壮大なプロジェクト成果は大いに注目を集めた。Ro(NCC)は、タモキシフェン治療を受けている乳がん患者のCYP2D6多型性と臨床成績について報告し、対象患者の選定基準が議論され、中村博士がGAPなど国際共同研究への参加を推奨した。三木(東京医歯大)は、がん抑制タンパクBRCA2の新規機能として中心体制御機構に関与することを報告した。また、「Tumor microenvironment research - 1」のセッションでは、二口(名古屋市大)が、骨微小環境において、カテプシンG によって産生されるRANKLの可溶型sRANKLが乳癌の骨転移の治療と予防のための標的となる可能性を示し、Lee(Yonsei U.) は、RINCKによって誘導されるPKCα分解とEGFR転写促進による皮膚発癌において、Ei24欠失が抑制に機能することを発表した。前田(東大)は、広範囲切片法による日本人卵巣癌症例の病理分析の結果、「卵巣癌」とみなされていた腫瘍の一部は卵管上皮起源であることを発表し、Park(NCC)が、腫瘍微小環境においてGALECTIN-3は、JAK-STAT経路を通じて、サイトカイン様の作用を発揮する報告があった。午後から行なわれた「Progress in breast cancer research - 2」のセッションでは、田村(国立がんセ)が、乳癌におけるtrastuzumabによる化学療法の効果予測のためのバイオマーカー探索と、64Cu-DOTA-trastuzumabを用いたPETによるtrastuzumabの分子イメージングのプロジェクトを報告した。Han(SNU)は、若年乳がん患者の特徴及び問題点を臨床医の立場で詳細に報告し、牛島(国立がんセ)は、異常なDNAメチル化の誘導機構について、自ら構築したスナネズミ胃炎モデルとマウス大腸炎モデルの詳細な解析結果から、Il1bとNos2の重要性を発表し、また、Woo(SNU)は、フェリチンMRレポーターの in vivo 細胞追跡への応用を発表した。最後のセッション「Tumor microenvironment research - 2」では、Kim (Chonnam National U.)が、大腸腺腫性ポリポーシスに関連した腫瘍微小環境の中で、KITENINは大腸腺腫の悪性化に寄与していることを報告した。また、湯浅(東京医歯大)は、EMTに関わるEカドヘリンおよびP53を不活性化することによってびまん性胃癌のマウスモデルを作製し、その解析による根本的な胃の発癌機構の解明を目指した研究成果を報告し、さらに、Kim(Korea U.)は、腫瘍細胞におけるX連鎖リンパ球調節タンパクpM1(XLR)の異所的な発現が腫瘍免疫回避のために重要な機構であることを示し、癌免疫治療の有望な分子標的としての可能性を報告した。また、ポスターセッションでは、日本から宮本(呉医療セ)、菊山(国立がんセ)、紙谷(東大)、大島浩子(金沢大)富田(癌研化療セ)、川田(微生物化学研究会)、赤塚(名大)、小西(愛知医大)が、韓国からYang(Sookmyung Women´s U.)、Kim(NCC)、Yoon(NCC)、Moon(SNU)、Park(NCC)、Lee(Ewha Womans U.)、Park(SNU)、Kim(NCC)、Lim(Korea Institute of Radiological and Medical Sciences)、Na(SNU)が、大変興味深い研究内容について発表した。

今回のワークショップでは、先端的な乳がん研究を中心に、腫瘍微小環境、個別化医療、メチル化、マウスモデル、病理、バイオマーカーなど多岐にわたる水準の高い講演によって知識を共有すると共に、活発な議論が十分に行われた。ポスターセッションでも、熱い討論が続けられるなど、ワークショップ会場は終日熱気に満ちていた。韓国NCCツアー、レセプションを含め、本ワークショップは二国間の情報交換と研究者交流によって相互理解を促進し、その結果、がんの新しい安全で有効性の高い治療法や予防法の開発に貢献することが期待される。
最後に、本ワークショップをコーディネートして頂いた中村先生(国立がんセ)、大島正伸先生(金沢大)、および本ワークショップ開催にあたって支援をしていただいた、がん支援総括支援活動班および財団法人がん研究振興財団に、この場をお借りしまして感謝申し上げます。

(文責:三木義男)