研究紹介

がん研究 スポットライト

独自に作製したヒト化マウスを使ってエイズ関連悪性リンパ腫を研究
疾患の発症機構や医薬品の研究では、動物実験による検討が行われる。しかし、マウスなどの実験動物は、すべてのヒト疾患にかかるわけではない。そこで、岡田教授は、免疫をほとんどもたないマウスを独自に開発し、これに様々なヒト細胞を移植してヒト化マウスを作製している。これらのヒト化マウスはエイズ関連悪性リンパ腫の解明をはじめ、今後のがん研究の進展に大きく貢献しそうだ。
熊本大学 エイズ学研究センター 岡田プロジェクト研究室 教授 岡田 誠治
悪性リンパ腫で死亡するHIV感染者を救いたい

エイズ関連悪性リンパ腫が問題となっているそうですね?

エイズは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって発症する感染症で、2000年頃までは死の病と恐れられていました。しかし発症を抑える治療法ができ、現在では薬でコントロール可能な疾患です。ところが今度は、HIV感染者の10人に1人が悪性リンパ腫で亡くなるという新たな問題が生じています。悪性リンパ腫とは、リンパ系組織のがんのことで、通常、首や腋(わき)の下、足のつけ根などリンパ節が多い場所にしこりができます。HIV感染者は免疫力が低下しているので、ほかのウイルスの感染等を契機として悪性リンパ腫を起こします。意外に思われるかもしれませんが、日本ではHIV感染者は減るどころか、むしろ増えており、エイズ関連悪性リンパ腫はHIV感染者の命に関わる重要な問題になっています。私はエイズ研究者として、HIV感染者がどうしてリンパ腫になりやすいのか、なってしまったらどのように治療したらいいのかを明らかにしたいと思い、2007年頃からエイズ関連悪性リンパ腫の研究を始めました。

ヒト化マウスをつくって研究していると聞きました。

疾患や医薬品開発の研究では、細胞や組織を使った実験が行われます。しかし、疾患の発症機構などを真に理解するためには、モデル動物などの個体を使って病状をみる必要があります。特に、医薬品の開発で、ヒトに投与する直前に行われる非臨床試験の最終段階では、生体内での薬物動態や副作用を検討するために、必ず動物実験が行われます。しかし、実験動物が必ずしもヒトの疾患にかかるわけではない点が問題です。例えば、エイズの場合、HIVは霊長類にしか感染せず、マウスには感染しません。そこで、ヒトの細胞をもったヒト化マウスをつくりたいと考えました。


プロフィール
岡田 誠治

岡田 誠治(おかだ・せいじ)
熊本大学 エイズ学研究センター 岡田プロジェクト研究室 教授

1985年 自治医科大学医学部卒業
1985年 茨城県立中央病院内科医員
1987年 県西総合病院内科医員
1991年 自治医科大学血液学講座臨床研修生
1992年 博士(医学)
1992年 Research Institute of Molecular Pathology (Vienna), Post Doctoral Fellow
1993年 桂村国民健康保険沢山診療所所長
1996年 自治医大の義務年限修了後、千葉大学医学部附属高次機能制御研究センター生体情報分野助手
2000年 千葉大学大学院医学研究科発生医学講座分化制御学助教授
2002年 熊本大学エイズ学研究センター予防開発分野教授
2010年 同センター岡田プロジェクト研究室教授(改組による)