研究紹介

がん研究 スポットライト

独自に作製したヒト化マウスを使ってエイズ関連悪性リンパ腫を研究
ヒト化マウスががん研究にもたらす新たな展開

ヒト化マウスはほかのがん研究にも使えますね。

私たちのグループでは、このヒト化マウスを使ってタイのコンケン大学と共同で胆管がんの研究を行っています。世界には、地域特有のがんがあります。コンケン大学のあるタイ東北部には、川魚を生で食べる習慣があって、魚に寄生した肝吸虫がヒトの胆管に感染することで胆管がんになってしまうのです。このがんの治療標的の探索や薬剤の効果の検討に、ヒト化マウスが役立っています。上の写真はヒト胆管がんを移植したNOJマウスを用いて、セファランチンという薬剤の効果を調べた例です。

これに限らず、私たちがつくった高度免疫不全マウスを使うことで、いろいろながんのモデルマウスをつくることができますので、多くの人に使っていただきたいと思っています。すでに何人かの研究者に譲っており、成果も徐々にあがってきています。「がん支援」に参加するようになってからは、他の研究者からいろいろな意見やアイディアをいただくこともあり、研究の幅が広がっています。

様々なマウスをつくる技術は今後、がん研究の鍵となりそうですね。

実は今、生体イメージングに適したマウスの開発も進めています。生体イメージング法を使うことで、生体を傷つけることなく、病状を可視化したり定量化したりできます。1つの個体で、病状の変化を最初から最後まで追跡できますので、個体差を捉えることができますし、実験に必要なマウスの数も少なくてすみます。

最近は特に、蛍光色素を使ったイメージング技術の進歩が著しいのですが、マウスの体毛で蛍光が見えにくくなるという問題があります。そのため、これまでは体毛のないヌードマウスが使われてきましたが、先ほど話したようにヌードマウスにヒトの細胞を移植するのは、簡単ではありません。そこで私たちのグループでは、ヌードマウスと、高度免疫不全のBalb/c RJマウスをかけ合わせて、無毛で高度免疫不全のNude-RJマウスをつくりました。さらに、このマウスとGFPマウスを掛け合わせて、全身の細胞が緑色蛍光を発するマウスもつくりました(Nude GFP RJマウス)。このマウスなら、マウス細胞と移植したヒト細胞を簡単に区別できます。

実験動物としてのマウスは改良が続き、生命科学や医学研究におけるツールとして、ますます使いやすくなっています。今後はこれをどのように利用していくかが鍵になるでしょう。

【生体イメージングに使うNude GFP RJマウスの特徴】
【Nude GFP RJマウスでは、ホストと腫瘍の区別が容易である】

Nude GFP RJマウスに、赤色蛍光タンパク質(mCherryなど)で標識したヒト腫瘍細胞を移植すると、蛍光イメージングにより一目でマウス由来の細胞とヒト腫瘍細胞由来の細胞を区別できる。この写真はmCherryで標識したヒト胆管がん細胞株を移植したもの。移植したヒト腫瘍が深い赤、ホストの腫瘍血管が緑に光って見える。顕微鏡でもっと拡大すれば、ホストの腫瘍関連マクロファージとがん関連線維芽細胞もがん細胞と区別して見える。

岡田 誠治

TEXT:池田亜希子  PHOTO:大塚 俊
取材日:2014年10月27日