研究紹介

がん研究 スポットライト

長鎖ncRNAを、放射線治療の効果予測マーカーに用いる
同じ臓器や組織のがんでも、患者さんごとに放射線治療の効果が異なる。宮川博士は、XISTという長鎖のncRNAが、子宮頸がんに対する放射線治療の効果推定マーカーの候補になりうることを突き止めるとともに、新たなマーカー候補探索や背景にある分子基盤解明を進めている。
東京大学医学部附属病院 病理部 特任助教 宮川 隆
長鎖ncRNAとがんの放射線治療を、研究の2本柱に

長鎖ncRNAと放射線治療を研究対象にされています。

はい、かなりユニークだと自負しています。薬学系出身なので「がん領域だと、抗がん剤研究ですか?」とよく聞かれるのですが、University of Southern California(USC)のNorris Comprehensive Cancer Centerで研修を受けた際にがんに興味をもち、その後の博士課程で指導教官が放射線を専門としていたことなどから、がんの放射線治療を対象にしました。

USCの校章とNorris Comprehensive Cancer Center

もう一つの柱である長鎖ncRNAは、タンパク質をコードしない非コードRNA(ncRNA)の一種です。ヒトゲノムの解読、またそれに続く活発な研究によって、タンパク質をコードする遺伝子は全ゲノムの約2%にすぎないことが明らかになりました。一方で、残りのおよそ98%の領域は非コード領域と呼ばれ、そこからも多数のRNAが転写されて作られるもののタンパク質に翻訳されることはなく、RNAのままで遺伝子の発現調節に影響することも突き止められました。生物が高等になるにしたがい、DNA上の非コード領域、それに付随するncRNAの種類が増えていくので、私は、これらのncRNAに「ヒトをヒトたらしめる鍵」があると思い、大きな興味を抱いていました。さらに、タンパク質をコードする部分からも多数のncRNAがつくられることもわかり、より興味をもつことになりました。

ncRNAはDNAの広い領域から作られている。

マイクロRNAではなく、長鎖ncRNAを対象とされる理由は?

20〜25塩基ほどの短いncRNA(マイクロRNA:miRNA)については、多くの研究者が参入し、あっという間に2000種以上が同定されています。そして、miRNAが、発生、分化、脳機能、老化、感染、がんといった、あらゆる生命現象に関与していることが明らかになってきました。

ところが、200塩基から、長いものに至っては数十万塩基に及ぶ長鎖ncRNAの方は、扱いづらさと解析の難しさから、手を出す研究者がごくわずかしかいません。そこで、未踏の長鎖ncRNAをやってみようと考えたのです。学部時代から博士課程の時代に至るまでmRNAやtRNAの研究を続けてきたので、RNAの解析や検出に自信をもっていたというのもありました。

Miyagawa et al. Biochem Bophys Res Commun. 2012

独自に開発したtRNAの蛍光in situ hybridization法による
熱ストレスのヒト細胞への影響の検出。


プロフィール

宮川 隆(みやがわ りゅう)
東京大学医学部附属病院 病理部 特任助教

2007年3月 名古屋市立大学薬学部薬学科卒業、薬剤師免許取得
2009年3月 同大学大学院薬学研究科修士課程修了(在学中に、米国・南カルフォルニア大学(USC)で国際薬学臨床研修を修了)
2012年3月 東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、理学博士号取得(博士課程在籍中に日本学術振興会特別研究員 DC2採用)
2012年4月 日本学術振興会特別研究員(PD)
2013年4月 東京大学大学院医学系研究科人体病理学教室 特任助教
2015年4月 東京大学医学部附属病院 病理部 特任助教