研究紹介

がん研究 スポットライト

長鎖ncRNAを、放射線治療の効果予測マーカーに用いる
MALAT-1からXISTへ

まず、どのような長鎖ncRNAを解析されたのでしょうか?

ncRNAを研究するようになった博士課程時代では、転移性の肺がんで同定されたMALAT-1という長鎖ncRNAです。MALAT-1は、さまざまながんで発現が有意に上がっており、がん細胞の運動やmRNAのスプライシングに関わっていると報告されていました。がん細胞中では「核スペックル」とよばれる核内構造体に局在することが知られていますが、私はこの局在ががんの病態と関連しているのではないかと考え、まず、MALAT-1の核スペックル局在に必要なMALAT-1側の配列と、核スペックル内の三種類のタンパク質を同定しました。

続いて、放射線同位元素を用いて局在機構の分子メカニズムの鍵となるRNAとタンパク質の相互作用について、解明を進めました。結果として、核スペックル内で特定のタンパク質(RNPS1)と結合することが、この局在機構に重要だということを突き止めました。

【明らかになったMALAT-1の核スペックル局在化の分子メカニズ】

本プロジェクトでは、XISTを対象にされていますね。

MALAT-1の研究で得られてきた知見を踏まえ、放射線治療でも鍵となる長鎖ncRNAがあるはずだと考え、放射線治療の効果予測マーカーとなる長鎖ncRNAの治療予後と解析を行おうと考えました。そして、XISTとよばれる長鎖ncRNAの発現量が、子宮頸がんの放射線治療に対する効果と相関することを見出しました。

XISTは、女性の性染色体(2本のX染色体)のいずれか一方を不活性化する因子として知られています。最近になって、X染色体上のがん遺伝子の発現にも関与し、乳がんや卵巣がんなどの病態や予後を左右するのではないかとの報告がなされていました。

【XISTはX染色体不活性化機構で中心的役割を果たす】

XIST RNAが片方のX染色体を取り巻き、不活性化に導く。

どのような研究アプローチをされたのでしょうか?

あらかじめ解析に不適切な症例や、がん含有率が少ない症例を除いたうえで、子宮頸がんの化学放射線療法を行っている患者さん49人を対象に解析を行いました。放射線治療前に、患者さんの同意の下で採取していた組織臨床検体を用いてXISTの発現を調べ、合わせて、それらの発現量データと、放射線治療後の予後や治療後経過が書かれてあるカルテとを照らし合わせました。その結果、XISTの発現量が多い患者さんほど放射線がよく効き、発現が少ないと効きにくく、予後不良であることがわかったのです。

放射線治療と長鎖ncRNAとの関係に着目した先行研究はほとんどない中で、私たちの研究成果をOncology Lettersという国際雑誌にまとめることができました。XISTの発現と放射線治療の効果が相関する理由はわかっていないのですが、ダイレクトに臨床につながる成果で、より効果的な治療を選択するための指標になると考えています。

【XISTの発現が化学放射線療法の予後に関与する可能性】