研究紹介

がん研究 スポットライト

がん細胞を長波長で赤く光らせ、生きたまま体外から観察する
長波長光を用いて、がんの転移メカニズムにせまる

がん研究者の方々は、アカルミネをどのように使っているのでしょうか?

まず、ホタルの発光酵素遺伝子を「導入するがん細胞」に組み込んだうえで、マウスなどの実験動物に導入し、人工的にがんを作らせます。その後、アカルミネを体外から導入すると、がん細胞内でのみ酵素と基質の化学反応がおき、長波長光を出すようになります。長波長の赤い光は人間の目には見えませんが、蛍光顕微鏡などでとらえることができます。生きたまま何日でも観察可能なので、がんがどのように発生し、成長し、転移していくのか、といったことを細胞レベルで追うことが可能になります。つまり、アカルミネを使うと、がんの浸潤や転移を選り分けながら追えるようになるのです。

がん研究者の方々が声を揃えておっしゃるのは、「なんとかして分子レベルでのがんの転移メカニズムを明らかにしたい」ということです。現在は、転移のない原発がんはほぼ治るようになっており、いかにして転移を抑え、転移がんを治療するかが、予後の鍵を握っているといえます。長波長光を用いた動物研究が、根本から転移を抑える薬や治療の開発につながれば、きわめて多くの人々が救われることになり、その経済効果も計り知れません。


【アカルミネの生体内での可視化】
Luciferin, firefly Luciferin, sample

※自治医科大学 小林英司教授 寺谷工講師 提供

アカルミネはヒトに適応できないのでしょうか?

酵素の遺伝子を導入しなくてはならないので、現状のままではヒトには使えません。ただし、遺伝子を導入することなく、「人工酵素」などで代替できれば、ヒトへの応用の道が開けると考えています。ぜひ挑戦したいと思っていますので、興味をお持ちの研究者の方々のご連絡をお待ちしています。

がん研究以外でも広く応用できそうですね。

はい、生物学や医学の基礎研究に広く使えると考えています。たとえば、再生医療分野の研究者が興味を示してくださり、実際にアカルミネを試用してもらっています。幹細胞の存在部位、幹細胞からの細胞分化や増殖のようす、細胞の移動などについて、さまざまな知見が得られれば、再生医療の発展にも大いに寄与できると期待しています。

がん研究支援プロジェクトにおいては、医学や生化学領域の研究者、私のような材料系の技術開発者、検出器を改良する工学系技術者が力を合わせて研究を進めています。これからも、「がんの克服」という人類最大の課題に挑戦していきたいと思います。


TEXT:西村尚子 PHOTO:荒井邦夫
取材日:2012年7月24日