研究紹介

がん研究 スポットライト

がん細胞を長波長で赤く光らせ、生きたまま体外から観察する
発光基質に手を加え、より長い波長を出させる

具体的に、ルシフェリンの化学構造にどのような操作を加えたのでしょう?

化学構造を少しずつ変えた化合物を20〜30種合成し、「化学構造と発光と波長の関係」を調べました。一般に、化学構造中の二重結合を増やすと長波長化することが知られています。ただし、酵素との反応部位に手を加えると、化学反応がおきなくなってしまいます。まず、試行錯誤で「ルシフェリンの手を加えてはいけない部位」を探しだしました。そのうえで理論的な予測をたて、実際に二重結合を増やした化合物を20〜30種合成し、北米産のホタル由来酵素と反応させました。いずれも、何らかの色に光りましたが、そのなかで最も長い675ナノの波長を出したものを「アカルミネ」と名付け、世界に先駆けて製品化しました。

【アカルミネ™】

※データ提供元:筑波大学 代謝内科 武内先生

ご苦労されたこと、あるいは課題として残ることは?

もとはホタルの生体がもつ精密な基質と酵素の反応です。そのうちの基質だけを人工物に置き換え、生体の酵素を騙して反応させることになるので、発光ポイントをみきわめるのが最大のポイントとなりました。ホタルの発光は2段階で進んでいくのですが、2つ目の発光反応のしくみを明らかにし、それを長波長で実現できるようにしました。
残された課題は、いかに輝度を上げるかということです。ユーザーの方々から「光が弱い、より輝度の大きいものを開発してほしい」との要望が多く寄せられているのです。人工の基質には人工の酵素が必要なのではないかと考え、検討をはじめているところです。
また、価格が高く、汎用化に至らない状況をいかに打開するかということも課題です。おそらく、生化学の手法を使われている研究者の方々は、長波長光の可能性を十分に理解されていると思いますが、理論どおりにいくのか半信半疑なところがあるようです。とくに日本の方々は、先駆的で不確かな技術を使いたがらない傾向にありますね。今後は、試供品などもお配りし、一人でも多くの方に使っていただきたいと考えています。ニーズが増えれば、価格は下がっていくと思われます。