研究紹介

インタビュー
研究活動支援-外部の研究者に探査システムの活用を提供

「私どもは、がん細胞パネルを用いたデータベース作成とその活用をめざして研究するうちに、期せずしてポストゲノム研究とケミカルバイオロジーの交錯する領域で抗がん剤探索を行っている状況となった。その流れの中で、新規化合物が臨床試験に入れるところまでこぎ着けたのはひとつの僥倖でした。“産学連携”の賜物でもあると思います」と矢守部長は言う。


“産学連携”について、矢守部長の所属するがん化学療法センターでは、アメリカのNCIで受けたオープンな研究姿勢にならうかのように、「JFCR39細胞パネル」構築後から準備を始め、94年より外部の新規抗がん剤の研究者に対して、細胞レベルからin silicoまで多彩な活性スクリーニング基盤を提供して、国内でのがん治療薬開発の支援を行っている。これは「フィンガープリントを用いた細胞パネル」という、日本で唯一のユニークなシステムを活用できる支援態勢であり、矢守部長はこの活動の推進役も担っている。3つの柱からなる支援活動の概要を紹介しよう。


〈化学療法基盤支援活動〉

  1. chemist向けに──分子標的薬シードの探索と評価
    外部の化学者から新規化合物を預かり、データベースでスクリーニングを行い、その化合物の抗がん活性評価をレポートにして提供している(現在までに約4000件の新規化合物の評価を行った)。一方で、その新規化合物の構造と活性の開示をし、外部の化学者と協同で新薬開発の促進を図るのがねらいである。
  2. biologist向けに──標準阻害剤キットの整備と提供
    各種阻害剤を体系的に収集し、標準阻害剤キット(キナーゼ阻害剤キット、約300種類の化合物)として整備し、研究者に提供している。これは研究者・研究機関の規模や予算に関わる問題を軽減し、多種類・大量の阻害剤を購入しなくとも研究を進展できるように配慮した300種・少量のキットである。
  3. 研究者間のnetwork作り──化合物ライブラリーの構築と提供
    新規化合物を全国の研究者から集め、化合物ライブラリーを構築する。これによって、化合物が有する未知の活性を知りたい研究者と、特定の生理活性を有する化合物を探索したい研究者の双方への支援が実現する。

この研究支援活動に熱心な矢守部長は、最後に、抗がん剤開発の今後について「新しい抗がん剤が望まれるのは、がんの個性が非常に多様であり、1つの薬がすべてのがんに効くわけではないからです。“効くべき人”に“効くべき薬を使う”ために、これからは薬ごとに効く患者さんを正確に見分ける“見分け方”も同時開発していくことが必須です。しかし、それをどうやってやるかというのが、薬ごとに背景事情が違うので非常に難しい。副作用をできるだけ少なくして、厳しい安全性基準をクリアしながら新薬を誕生させなければならない。大変高いハードルであるが、産官学を連携して超えていかなければいけない課題ですね」と冷静な視点で締めくくった。


TEXT:阿部芳子 PHOTO:荒井邦夫
取材日:2011年5月25日

注釈
【がん化学療法センターのがん支援活動】
JFCR39細胞パネルを柱とした独自の研究基盤(Canser Cell Informatics)を通じて、多くの大学研究機関や製薬企業との共同研究を展開。
http://www.jfcr.or.jp/
chemotherapy/about/index.html