研究紹介

インタビュー

新たながん治療に向けて

現在のがん治療は、一部を除いて、がん細胞とともに正常細胞を殺すことが多く、重い副作用が生じがちだ。さらに、治療を続けるうちに腫瘍が薬剤抵抗性を獲得する。特に一般的に増殖の速い細胞をターゲットとした抗がん剤が、増殖の遅いがん幹細胞に効きにくい、といった問題もある。しかも、時間とともに変異遺伝子が蓄積されていき、浸潤能が高くなるなど悪性度が増して行く。これらを克服するには、がん幹細胞にも効き、がんだけをピンポイントで確実にたたける治療法を、なるべく多くの種類、開発することが必要となる。

「そういう意味で、ALK遺伝子をターゲットに作用する、肺非小細胞がんの分子標的薬などは、実に理に叶ったものといえます」。そうコメントする上野教授は、すでに食道がん幹細胞、舌がん幹細胞の治療の標的となる様な遺伝子の探索を進めているという。

「未発表なので詳細については述べられませんが、がん幹細胞の遺伝子変異をうまく利用することで、副作用の少ない、新しい治療が可能になると期待しています」。そう話す上野教授は、研究を最大限効率化するために、ゲノム編集などの最先端技術を積極的に取り入れ、日本発の新たながん治療の実現に向けて研究を続けている。



上野 博夫

TEXT:西村尚子 PHOTO:岩上紗亜耶
取材日:2015年8月25日