研究紹介

インタビュー

舌の幹細胞を世界ではじめて同定

幹細胞は自己複製と分化の両方ができる細胞と定義されているが、一般的に幹細胞の存在を証明するためには、生体内において1個の細胞レベルでそのことを証明しなくてはいけないところに幹細胞研究の難しさがある。成体の多色細胞系譜追跡法を用いると、分化した細胞は寿命が短く短期間に死に到るため、組織から排除されていくのがわかる。一方で、組織幹細胞は自己複製を繰り返すことで組織に残り続け、周囲に細胞を供給していく。その結果、組織幹細胞の周囲が次第にその幹細胞由来の細胞に置き換わり、幹細胞と同一の色のコロニーが形成されることになる。

実際に上野教授はこの手法によって、舌と食道の上皮幹細胞の同定に成功した。「たとえば舌では、4色に蛍光標識してから約4週間で、糸状乳頭とよばれる組織の間のくぼみが1色の細胞で占められるようになりました。このことは、一つ一つのくぼみに存在する全細胞が1個の幹細胞から作り出されたことを示すものでした」と話す。さらに上野教授は、他のいくつかの組織の幹細胞マーカーとして知られていたBmi1遺伝子の発現を調べることで、くぼみに存在する幹細胞の特定にも成功した。


上野 博夫