研究紹介

インタビュー

細胞周期からみた細胞老化誘導のメカニズム

「テトラキメラ法は画期的でしたが、胚盤胞の時点で多色キメラを導入するために成体期以降の解析が難しく、そこが欠点でした」と上野教授。標識された細胞は、その後、どのように分化・増殖しようとも、一貫して同じ色の蛍光タンパク質を発現しつづける。そのため、成体になってから「特定のある細胞の挙動を追う」といったことはできなかった。

上野教授は次のように続ける。「当時、成体の組織幹細胞としてきっちり科学的にその存在が証明されていたのは、造血幹細胞のほか、小腸や神経などのごく一部でした。食道や舌などの組織幹細胞の探索は、まったく進んでいませんでした」。理由は、分裂速度などから解析の難しさや解析対象としての医学的重要度が、組織によって大きく異なるためだという。そこで上野教授は、成体以降の任意のタイミングで細胞を多色標識できる手法の開発にも乗り出した。

成果は2010年に得られた。「ウイルス由来のDNA切断酵素の変異体(CreERT2)」と、「CreERT2が標的とする配列(loxp)」を利用した新たな薬剤誘導可能なの4色細胞系譜追跡法の開発にこぎつけたのだ。「当時、単色で細胞系譜追跡する手法は報告されていましたが、私たちの方法は4色で標識できる点がポイントでした」と上野教授。

手順はざっと以下の通りだ。まず、4色の蛍光タンパク質遺伝子が3セットの変異loxp配列でつながれたコンストラクトを持つレインボーマウスを作製する。一方、CreERT2遺伝子を幹細胞に特異的な遺伝子のプロモータ下流にノックインしたマウスを作る。次に、両マウスを掛け合わせて仔マウスを得る。そのマウスが成体になったところで「CreERT2を活性化させる薬剤(タモキシフェン)」を腹腔内に注入する。すると、幹細胞に発現しているCreERT2が活性化されて3セットのloxp配列のうちどれかが任意に切り出される。その結果、それぞれの細胞において「プロモーターと隣り合わせになった蛍光タンパク質遺伝子」が発現され、結果として幹細胞は4色の内のいずれかに蛍光標識される。もちろん、その細胞から増殖した細胞は、全て同色を示す。

「はじめは4色でしたが、現在は最高10色までの標識が可能になっており、さらに35色に増やせるよう取り組んでいるところです」。上野教授はそうコメントする。



【レインボーマウスを用いた10色細胞系解析の例】
左:小腸陰窩の横断面、右:大腸上皮


nature call biology

Nature Cell Biology誌の表紙を飾った
舌上皮多色解析の図