研究紹介

インタビュー
必要以上に鉄を摂取している場合も

豊國教授は、約30年にわたり、腎臓がんや中皮腫など過剰鉄による発がん動物モデルを解析してきた。どのモデルでも、腫瘍のゲノムを解析すると、ゲノムには広い範囲で増幅や欠損の変化が見られた、おもな標的遺伝子は、CDKN2A/2B(p16/p15)だった。

「これまでの結果を見ると、鉄の過剰な状態が、ヒトの一般的ながん発生にも重要な役割を果たしている可能性があります」。発がんには、過剰に蓄積された鉄が活性酸素を発生させる機構が深くかかわっていると豊國教授らは考えている。

「このように発がんと過剰鉄のかかわりが明らかになってきたことから、必要以上の鉄分をとることが発がんのリスクを高めることになるのではないかと考えています」と豊國教授はいう。もちろん、成長過程の子供や妊婦などは積極的に鉄を摂取しなければならないが、普通の大人が積極的に鉄のサプリメントを摂取していると、必要以上に体内に鉄をため込んでいる可能性がある。体重60kgの人で体内の鉄の量は4gほどが正常とされる。上で述べたとおり、一度体内に取り込まれた鉄は、出血以外に体外に出ることはない。そのため、男性では30歳を過ぎたころから、女性では50歳を過ぎたころから高齢になるにつれて、体内に鉄が蓄積しやすくなる。

「鉄のサプリメントを不用意にとらないなど、鉄の摂取についてよく考える必要があると思います。定期的に献血することが、体内の過剰な鉄を減らし、がん予防につながるかもしれません」と豊國教授は注意を促す。