研究紹介

インタビュー

ES/iPS細胞とがん幹細胞に共通するエピゲノム分子基盤を探索

「p53システムの破綻は細胞のがん化の引き金になることがわかっています。p53をつぶすとiPSができやすく、ES細胞やiPS細胞は、テロメア活性が高く無限の増殖能があってがん細胞にとてもよく似ているのです」と語る田中博士は、がん幹細胞に近い性質をもつiPS細胞やES細胞を使ってp53のがん化抑制機構の未知の領域を解明しようとしている。
研究のターゲットはあくまでメカニズムそのものなので、再生医療やその実用的研究とは異なる。もちろん、iPS細胞作製の効率化を優先するために「山中先生が樹立されたiPS細胞も使いますし、自分たちで患者さん由来の脂肪細胞や内皮細胞から樹立したiPS細胞も使っています。現に私のおしりの皮膚からiPS細胞を作成して解析しています。1つの細胞だけでは機能的には不十分だったり、バイアスがかかったりすることがあるため、理化学研究所のES細胞なども用いて解析を行なっているところ」だという。

2007年にヒトiPS細胞の作製に成功して以降、多くの研究者がiPS細胞をつくれるようになったが、実はこのiPS細胞がなぜ初期化されるか分子メカニズムは完全には解明されていないという。田中博士が行うiPSを使った研究は、その謎の解明につながる可能性も秘めている。

「細胞老化と、細胞の若返り(リプログラミング)はまるで対照的です。万能細胞をモデルにしてリプログラム機構が解明できれば、そこから得られた知見をがん化の解明に応用できるはずです。p53複合体の分子基盤の解明は、単純にがんの制御だけでなく、細胞のリプログラミング機構といったものの分子基盤の情報としても役立つでしょうし、将来的には再生医療の分野にもきっと貢献できると信じています」

【核リプログラム・老化・がんにおけるp53の役割】
核リプログラム・老化・がんにおけるp53の役割

田中知明