研究紹介

インタビュー

研究成果をがん予防に生かすために

胃、肝臓、子宮、膵臓、食道のがんなど、患者数の多いがんについては、それぞれで、発症リスクを高めるSNPが数十個ずつみつかり、さらに環境要因との関連も明らかにされていくと考えられている。

「私たちが収集したDNAなどの生体試料や追跡データを匿名化して、研究者の方々に提供し、日々の研究に役立てていただくのが、がん支援活動のミッションです。そのうえで、がんの予防や早期診断などにつなげることが次の目標といえるでしょう」と田中部長。後者について田中部長らは、手術可能な早期の膵臓がんの診断マーカーになりうるタンパク質の研究を名古屋大学との共同で進めているとしている。

私たちは、生まれもった遺伝子を変えることはできないので、がんの発症を防いだり、遅らせたりするには、環境要因を修正するほかない。この点について田中部長は、「将来的には、自分のSNP情報を知りたい人が調べられる体制を作り、リスク評価や予防の相談などに応じられるサービスを提供できるとよいと考えています。ただし、自分のSNPなどの遺伝情報を知りたくないという人もいますので、調査対象者に一律でSNP情報をお知らせするといったことは考えていません」と話す。

一方、初回時の血液を用いた解析により、SNPの型によって血中の肝機能を示す値に体質的な高低があることも明らかになりつつあるという。つまり、「値が高くても肝臓に異常のない人」と「低くても肝臓に異常のある人」がいることになる。「将来は、こうしたSNP情報を加味した検査の正常値を設け、個別化した検診や診断医療が実現するとよいと思っています」と田中部長。

J-MICC Studyの課題について田中部長は、「近々の課題は、エントリーが2013年3月で閉め切られるので、それまでに対象者が10万人を超えるようにすることです。その先は、今期のがん支援プロジェクトが2015年3月までですので、それまでにきちんとした結果を出し、2025年まで続く予定の追跡調査まで、プロジェクトをつなげていくことが重要だと考えています」と話す。

現在、内閣府によるゲノムコーホート研究、東北メディカル・メガバンク構想など、国レベルの大規模なコーホート研究が立ち上がりつつある。先行しているJ-MICC Studyのデータをこれらのデータと統合解析できれば数十万人規模の研究が可能になり、日本人の体質に応じたよりきめ細かい情報の収集と解析が実現するだろう。今や国民病ともいえるがん。J-MICC Studyの今後の成果を期待したい。


TEXT:西村尚子 PHOTO:荒井邦夫
取材日:2012年8月24日