研究紹介

インタビュー

愛知県がんセンターとしての研究成果

「J-MICC Studyがスタートして約7年たちますが、この7年で新たにがんを発症した調査対象者はまだそれほど多くなく、プロジェクト全体としての解析にはまだ時間が必要な状況です」。田中部長はそう話したうえで次のように続ける。

「一方で、各施設が個別に進める研究については成果が出はじめており、その詳細については、ホームページに掲載するようにしています。とくに愛知県がんセンターの場合は、がんを疑って受診し、登録時にはすでにがんを発症している方が少なくありません。よって、がんを発症していない方との比較解析がしやすく、すでに、いくつかの研究成果を出すことができているのです」。

成果の一つは、7つの遺伝子中に含まれる14か所のSNPが、乳がんの発症に関連していることを明らかにしたというものだ。「愛知県がんセンターの登録者のうちの2000人を対象に、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った結果得られたもので、これらのSNPを10〜14個もつ人は、0〜3個もつ人にくらべて、最大で8.69倍も乳がんを発症しやすいことを突き止めました。このようなSNPの情報に、『肥満しているか否か』、『月経開始年齢が低いか否か』といった環境要因を加えると、乳がんのリスクを予測する精度がさらに上がることもわかりました」と田中部長。

【遺伝的ななりやすさに応じた乳がん予防の可能性】
遺伝的ななりやすさに応じた乳がん予防の可能性

図1. 乳がんの素因遺伝子を何個持つかによって対象者を5 つのグループに分けて乳がんリスクを比較した成績
図2. 個人の遺伝的要因と環境要因の両方を組み合わせると、将来の乳がん発症をより正確に予測できることを示すROC曲線


また、アルコールを分解する「アセトアルデヒト脱水素酵素」の遺伝子に含まれるSNPと肺がんリスクとの関連についての研究成果も報告した。

「あるSNPをもつ人が喫煙すると、喫煙しない場合に比べて20倍も肺がんになりやすいことがわかったのです。このSNPをもつのは、少量の飲酒ですぐに赤くなる、下戸(げこ)と呼ばれるタイプの人で、日本人の約5%を占めるとされています。このタイプの人は、絶対にタバコを吸わないようにすべきだといえます」と話す。お酒に弱いのも肺がんになりやすいのも、アルコールやタバコの煙に含まれるアセトアルデヒドの分解能が低いことが原因だ。

「このような人はお酒を受け付けない体質なので、飲酒が原因でがんに罹ることははほとんどありえませんが、喫煙によるがんのリスクはまだ一般には知られていません。今後、広く啓発していく必要があると考えています」。田中部長は、そうコメントする

【遺伝的体質別にみた、タバコを吸った量と肺がんの罹りやすさとの関係】
遺伝的体質別にみた、タバコを吸った量と肺がんの罹りやすさとの関係