研究紹介

インタビュー

ウイルス感染の有無、遺伝子タイプなど要素も加味

1980年代までのコーホート研究では、調査対象者に対し、主には喫煙や食事などの生活習慣について、アンケート調査のように質問するだけだった。「その後、病気の発症原因との関連を調べる目的で、血液由来の成分が調査対象に加わりました。たとえば、肝炎ウイルスの感染の有無、感染している場合にはウイルスの量などを調べ、これらの状況と肝臓がんの発症との関連などが調べられるようになったのです」。田中英夫部長は、そう話す。

1990年代になると、分子生物学の発展とともに、ヒトゲノム計画などによって遺伝子レベルの情報が蓄積されるようになり、ゲノムのさまざまな部位において「1%以上の頻度で一塩基が変異した多様性(一塩基多型:SNP)」がみられることがわかった。このようなSNPのなかには「アルコールに対する強さ」、「服用した薬の効果の強弱」といった体質を左右するようなものがあり、どのようなSNPをもつとどのような疾患のリスクが高まるのか、といった点が注目されるようになっていった。

「こうした背景のもと、2000年ごろからは、生活習慣と発病リスクの関連だけでなく、そこに個人ごとのSNPも加味しようということになりました」と田中部長。その結果、たとえば、同じようにタバコを吸っていても、ある遺伝子中にもつSNPによって「肺がんになりやすい人」と「なりにくい人」がいることがわかってきたという。「ただし、ハイリスクになるといっても、ある一つのSNPで高まるリスクはせいぜい 1.3倍ほどしかありません。そのような高まるリスクのSNPを1人で10個以上持っている場合に、はじめてハイリスクといえるほどの関連を示す例が出てくるのです」と田中部長。


田中英夫


注釈
【SNP】
ゲノム中の塩基配列における、一塩基多型(single nucleotide polymorphism)のこと。スニップ、SNPsとも言う。ゲノム中に500万〜1000万くらいあるとされ、ゲノムの個人差や多様性を作り出している。SNPのなかには、がん、糖尿病、ぜんそく、心臓疾患などの発症リスク、薬の利き方や副作用の強弱などと関連するものがあることがわかってきている。