研究紹介

インタビュー
血管には、潰しやすい未熟なものと潰しにくい成熟したものとが混在する 高倉教授は、正常と思われる人でも形質変化した悪い細胞を何個か持っているが、実際にがんとして成長していくには、血管ががん組織の中に入り込み、酸素・栄養を供給してがん細胞が増え出す過程が必要になるという。

血管の組織は、血管の内腔の細胞(内皮細胞)の周りに壁の細胞がへばりついている。壁の細胞が多いほど非常に成熟した血管で、構造的にも非常に安定した血管になる。一方、がん組織の中の血管の場合、多くが周りの壁の細胞がない血管や未熟な血管である。

がんで亡くなる場合、多くは転移によるものである。高倉教授は、「がんの転移巣は、まさに血管が作られようとしているところだから、転移さえ抑制できればかなりの延命効果が期待できる。現行の血管新生抑制剤は、あらたに転移巣を作らせないという意味では非常に良い薬であるが、成熟した血管が残るため、その周りにがん細胞が存在すれば再びがんは成長してくる。しかも、私たちはその成熟した血管の周りにがん幹細胞が多いということを発表・報告している。成熟した血管を含めて血管を潰しにいかないと、がんを完全に潰すことは難しく、がん組織の増大・再発というのは絶対防げないだろう」という。

一般の人は、「ならば、血管新生抑制剤を大量に使えばいいのでは」と思うかもしれないが、ふつうの私たちの体の中にある正常な血管も潰してしまうのだ。ゆえに、がん幹細胞の棲息領域、いわゆる「血管ニッチを叩きにいく」ということが重要課題となるのである。

高倉教授

注釈
【がん細胞の悪性変化】
腫瘍微小環境におけるがん細胞の悪性変化は、下記のような状況になると起こると考えられる。
1. 腫瘍環境が低酸素になると、放射線抵抗性となり、効果が減じる。なぜなら、放射線は酸素に共鳴しているからである。
2. 腫瘍組織内圧と血管内圧の差がなくなると、抗がん剤の運搬ができなくなる。
3. 類炎症反応(がんは治癒することのない炎症)から活性酸素の過剰、染色体不安定、遺伝子変異などとなり、がんの悪性化の加速を招く。

【血管新生】
血管があらたに形成されること。腫瘍の増殖のときに使われることが多い。