研究紹介

インタビュー
個体レベルでの研究は医療につながりやすい

鈴木教授は、ノックアウトマウスと呼ばれる遺伝子改変マウスを作製し、そのマウスにどんな症状が現れるかを調べ、そこからさかのぼって病気の発症メカニズムを解析するという手法をとっている。ノックアウトマウスとは、特定の遺伝子だけを働かないようにした(ノックアウトした)マウスのことである。

ノックアウトマウスを作製するには、まず、目的の遺伝子だけを改変した胚性幹細胞をつくり、その細胞を胚盤胞に注入してメスマウスの子宮に戻し出産させる。生まれた子供をさらに交配させて、ノックアウトマウスが誕生する。

実際には多くのステップが必要で、その1つ1つがうまくいくとは限らないため、ノックアウトマウスの作製には時間を要するそうだ。しかも、がん抑制遺伝子は正常な生体でも重要な機能を担っているため、苦労してノックアウトマウスを作製しても、生まれる前に死んでしまったり、生まれてもがんを発症するまでに長時間を要することが多い。

しかし、たとえ手間と時間がかかっても、ノックアウトマウスを使ったがん研究は有意義だと、鈴木教授は言う。「様々な要因が複雑に絡み合っているがんの発症メカニズムは、試験管レベルの実験では十分に再現できない場合があります。また、医療に応用することを考えれば、細胞だけを研究するのではなく、個体レベルで研究する必要があります」。また遺伝子改変動物は、がんモデル動物として病気の原因解明研究に利用されるのみならず、新規がん治療薬の効果判定など様々な研究において必要とされている。

【マニピュレーション顕微鏡】

マウスの胚盤胞に、胚性幹細胞を注入するときに用いる顕微鏡装置。画面を見ながら顕微鏡の脇にあるレバーを操作して、ロボットアームの先端の非常に細いピペットで胚性幹細胞を注入する。