研究紹介

インタビュー
塩基配列の場所が変異のしやすさに影響する

柴田分野長たちが参加する国際がんゲノムコンソーシアムは、次に、この塩基置換パターンによる解析法を大規模なサンプルに対して実施して、その成果を2013年にNature誌に発表した。解析対象は、30種類のがんからなる7000症例のがんゲノムであった。この研究においては、「変異が起きやすい場所はどこか」という点の解析に、特に力が注がれた。それまでの研究で、ゲノムには、変異の起きやすい場所と起きにくい場所があるのではないかといわれていたからである。この研究は、場所の情報を加えた解析方法のモデルを提示して、大きな反響を呼んだ。

ゲノム上の場所に関する情報を加えた解析方法とは、変異した塩基配列だけでなく、その前後各1塩基の配列情報を加えた分析であった。「変異を文脈の中でとらえようとするものです」と柴田分野長は説明する。その結果、塩基置換パターンのバリエーションは、上で述べた6種類に、前後の4種類ずつが乗じられて合計96種類に上り、解析するデータ量は膨大なものになった。このデータを非負価行列因子分解という数学的処理法で解析したところ、22種類の特徴(シグネチャー)で、がんを分類できることがわかったのである。

このシグネチャーで30種類のがん症例を分類し直すと、これまでには予想もしなかったような組み合わせのがん種の間に塩基置換パターンの共通性が見つかることもわかった。柴田分野長は、「そうしたがん種の間には、がんの発生や進展の過程で何らかの共通性があるのでしょう。がんゲノム情報が、未知の要因の存在を私たちに教えてくれているのです」と説明する。

【新たなシグネチャーによるがんの再分類】

塩基置換の前後の塩基がA、T、G、Cのどれであるかという情報を加えて解析を行ったところ、22のシグネチャーが見いだされた。どのシグネチャーをもつかで、30種類のがんを再分類できる。22のシグネチャーのうちの約半分は、どんな要因と相関しているのかわかっていない。Reprinted by permission from Macmillan Publishers Ltd: Nature 2013 Aug 22;500(7463):415-421, copyright (2013)