研究紹介

インタビュー
polyI:Cを認識するセンサーが判明

瀬谷教授、同研究室の松本美佐子准教授らがRNAアジュバントの研究開発を始める発端となったのは、2002年にpolyI:Cの結合相手を突き止めたことである。

細胞には、体内にウイルスや細菌などの病原体を侵入してきたとき、それを感知するToll様受容体(TLR)というセンサー役の分子が存在する。TLRが病原体のもつ特殊な分子構造を認識すると、細胞内にシグナルが伝達され、免疫システムが発動する。ヒトの場合、TLRは10種類あり、病原体の分子構造によって、どのTLRがそれを認識するかが決まっている。しかし、当時、polyI:CをどのTLRが認識しているかはわかっていなかった。

研究室では、松本准教授が中心になり、世界に先駆けてヒトの各種TLRのモノクローナル抗体をつくってきた。モノクローナル抗体とは、特定の抗原と結合する1種類の抗体の集団のことで、医学・生物学の研究に力を発揮する。例えば、あるタンパク質の機能や体内での局在を知りたいときに、そのタンパク質に結合するモノクローナル抗体をつくる。モノクローナル抗体がそのタンパク質の機能作用部位に結合すれば、機能が阻害されるため、そのタンパク質の本来の機能や結合相手を知ることができる。また、反応後のモノクローナル抗体を染色することで、そのタンパク質がどの細胞のどこに局在しているかを知ることができる。

松本准教授らは、TLR3のモノクローナル抗体を用いて解析を行う中で、TLR3がpolyI:Cを認識し、タイプIインターフェロン(IFN)産生を誘導することを突き止めた。また、TLR3は抗原提示樹状細胞のエンドソームに存在することがわかった。免疫細胞にはさまざまな種類があり、各々の役割を分担しながら、綿密に連携して異物を排除するように働く。樹状細胞は、免疫細胞の中で司令塔のような役割をしている重要な細胞で、自然免疫にかかわっている。

【TLR3の結晶構造と二本鎖RNAの認識】

TLR3と二本鎖RNAの結晶構造解析モデルが、瀬谷教授らとは別の研究グループによって示されている。TLR3は二量体を形成して二本鎖RNAを認識する。左図では緑とブルーのクエスチョンマークのような形のものがTLR3、青と赤の二重らせんが二本鎖RNAを示す。右のBとCの図では、灰色が二本鎖RNA。

注釈
【自然免疫】
免疫は「自然免疫」と「獲得免疫」に分けられる。自然免疫は、生まれながらに備わっている免疫応答で、異物と初めて出会っても、センサー(TLR)がそれをただちに感知し攻撃を促す。一方、獲得免疫は病原体などが体内に侵入することで後天的に獲得する免疫応答である。

【エンドソーム】
細胞小器官の一つで、細胞内に存在する小さな袋状の構造体。細胞外の物質の取り込みなどを行う。