研究紹介

インタビュー

成果を新たながん医療に結びつけるために

がんの根治が未だに難しいという現実は、新たな概念に基づく治療や薬が必要であることを端的に示している。佐谷教授は、がん根治の壁が、がん幹細胞の駆逐が容易ではない点にもあると考え、自らの成果を生かした多様な治療アプローチを模索している。たとえば、がん幹細胞の活性酸素に対する抵抗性を低下させることで、放射線や抗がん剤を効きやすくする薬剤を開発しており、現在、治験まで進んでいるという。

ただし、佐谷教授は次のようにも話す。「私は、がん幹細胞をターゲットにするだけでは、がんは根治しないだろうとも考えています。ある時点でがん幹細胞を全部殺せたとしても、通常のがん細胞が残っていれば、その中から再び幹細胞の機能を獲得したものが出てくると思われるからです。そのため、両方のがん細胞を駆逐できる薬剤の併用を行わなければなりません。また、再発や転移予防のための維持療法として、がん幹細胞治療をすべきなのではないかと考えています」。

実現には、白血病やグリオーマといったがん種ごとに、がん幹細胞に特異的な因子をみつけだし、そこにターゲットを絞ったピンポイントな治療戦略が必要となる。長期間の投与となると、服用のしやすさや安価であることも重要だろう。「新たな治療法の開発には、複数の基礎研究を合わせる必要があり、私たちも大いに貢献できると自負しています。もちろん、実用化を目指すのも私たちがん研究者の責務ですが、画期的な治療の開発には基礎研究の積み重ねが重要です。がん支援プロジェクトに助けられつつ、正確な基礎研究を進めているところです」と総括する佐谷教授。同時にいくつもの研究を進める、多忙な日々が続く。


佐谷 秀行



TEXT:西村尚子 PHOTO:岩上紗亜耶
取材日:2015年8月27日