研究紹介

インタビュー

グリオーマ幹細胞と血管の複合体についての検討

さらに佐谷教授は、グリオーマの幹細胞についても本プロジェクトの研究対象としている。グリオーマは脳腫瘍のなかでもとくに悪性度が高いとされる。腫瘍自体は小さくても、脳内のあちこちに広がる性質をもつため、根治がきわめて難しい。薬剤が血液脳関門でブロックされてしまうことも、治療を難しくする一因になっている。

佐谷教授が重要視しているのは、グリオーマが周囲の血管とともに浸潤複合体とでもいうべき構造を形成する現象だ。「がん腫で血管が豊富なことはよく知られていますが、これまでは血管新生の観点から研究が進み、臨床でも血管新生阻害薬が使われるようになっています。ところが、いまひとつ効きが悪く、副作用も無視できません。私たちは、血管新生だけでなく、既存の血管が腫瘍に取り込まれる現象もおきているのではないかと考え、マウスモデルを用いて検討することにしました」と佐谷教授。

実験はきわめて明快だ。まず、ストック済みのグリオーマ幹細胞を野生型マウスの脳に注入し、数日後にがん腫が形成されたところで脳ごと取り出す。このとき、がん幹細胞にはGFP遺伝子が導入されているため、がん腫は蛍光標識されている。血管については別の色素で染めておく。そのうえで、脳を生きたままスライスし、3次元環境で培養しつつリアルタイムで観察するというものだ。


マウス脳スライス作製風景。


「すでに、がん腫が既存の血管を引き込むようすを捉えた興味深い映像を得ています。がん幹細胞が産生する因子が、周囲のがん細胞を制御するというモデルを考えていますが、一方で、がん幹細胞が細胞外に放出する因子は、脳の周辺環境によって異なることがわかってきました」。そう話す佐谷教授は、グリオーマ幹細胞もまた、自分の置かれた微小環境に応じて臨機応変に適応していると考え、研究を進めている。