研究紹介

インタビュー

がん幹細胞の免疫回避機構にせまる

佐谷教授がこれまでに得たがん幹細胞についての知見をまとめると、おおよそ以下のようになる。

  1. 細胞の増殖が遅い、あるいは一時的に停止していて、増殖細胞を狙った治療が効かない。
  2. ポンプ機能が発達しており、一度取り込んだ薬剤を細胞外に排出する機能が高い。
  3. 解毒酵素の活性が高く、投与した薬剤の効能が阻害されてしまう。
  4. 活性酸素に対して抵抗性を発揮する。

以上の点に加え、佐谷教授は、がん幹細胞が免疫を回避する能力も兼ね備えているのではないかと考えはじめており、今回のプロジェクトでは免疫系の検討を行っている。たとえば、白血病と卵巣がんのがん幹細胞を、それぞれ野生型マウスの骨髄と卵巣に移植し、自然免疫と特異免疫の活性がどのように変化するかを解析中だ。


人工がん幹細胞(緑)が脳内に浸潤する様子を、マウス脳のスライスの培養を用いて観察した。脳内の血管(赤)周辺に沿って、がん幹細胞が移動している。


ここでも、独自のマウスモデルが大きな強みになっている。通常のがん細胞移植実験では免疫抑制マウスが用いられるため、免疫の異常を検討するのは難しい。その点、佐谷教授のモデルでは、免疫の正常な野生型マウスを用いるため、異常や活性化の変化について直に解析できる。「がん幹細胞が特別な因子を放出して、免疫が働きにくい環境を作っているということがわかりつつあります」とコメントする。