研究紹介

インタビュー
「マイクロRNA」の意外な働きに注目する

次に、齋藤准教授は「マイクロRNA」という研究テーマを示し、その特徴として2点を挙げた。1つは、通常の遺伝子から作られるメッセンジャーRNAは数百から数千程度の長さの塩基配列があるが、マイクロRNAは非常に短い1本鎖のRNAで、塩基配列の長さはおよそ20塩基程度しかないこと。もう1点は、マイクロRNAはノンコーディングRNAであること。メッセンジャーRNAは通常タンパク質を作る役割をしているけれども、ノンコーディングというのはタンパク質をコードしていないという意味で、マイクロRNAはタンパク質を作らない。


齋藤准教授の話では、通常の遺伝子というのはDNAからRNAになって最終的にはタンパク質になり、そのタンパク質が細胞の中でいろいろな働きをする。そのため、タンパク質にならなければ意味がないじゃないかというわけで、これまでは、一般にノンコーディングRNAは、体にとってあまり重要な働きをしていない、ガラクタじゃないかと言われていて、あまり注目されなかったそうなのだが、最近になって非常にホットな領域として注目されてきたと言う。


というのは、マイクロRNAは標的遺伝子というのを持っていて、マイクロRNAが標的とする遺伝子に結合すると、結合された遺伝子は発現が抑制されてしまうことが分かったのだ。「マイクロRNA自身は特に何もしていないのだが、その標的遺伝子の発現が落ちてしまう。これが問題なんですね」と齋藤准教授。「塩基というのはアデニン(A)とチミン(T)およびグアニン(G)とシトシン(C)というペアになっていて結合することが分かっているので、マイクロRNAが結合する標的遺伝子というのはデータベース上からある程度予測することが出来る。例えば、がん化などのように細胞に異常が起こり、あるマイクロRNAの発現が上昇したとすると、そのマイクロRNAがやってきて標的遺伝子に結合する。結合された遺伝子は発現が抑制されてしまうという仕組みです」。


マイクロRNAとは?

マイクロRNAとは?

マイクロRNAとは?
マイクロRNAはまずRNA polymerase II(RNA polII)の働きによって初期転写産物(pri-miRNA)が作られる。Droshaという酵素によってヘアピンのような構造をしている前駆体(pre-miRNA)に切り出された後、核内から細胞質に移動するとDicerという酵素で切断される。20塩基程度の短い1本鎖のRNAになると、標的遺伝子(Targetgene) の3’ 非翻訳領域に結合し、遺伝子の発現を抑えてしまう。


最近、マイクロRNAが生物の発生や、がんを始めとする疾患の分子病態に非常に重要な役割を果たしていることが分かってきた。例えば、結合された遺伝子が非常に重要ながん抑制遺伝子だった場合、がん抑制の機能が破綻してがんになってしまうことが予想される。