研究紹介

インタビュー
がんの転移を助けるものの存在が必要

折茂准教授は「現在いただいている研究費では、これまでの研究成果を土台に、がん転移の解析を進めようと考えています」という。がんの転移の具体的なメカニズムはほとんどが謎のままであるが、およそ次のような段階を経て起こっていると、多くの研究者が認めている。①まず、がん細胞ががん組織から飛び出し、周囲に浸潤する(局所浸潤)、②がん細胞が、血管内に侵入する、③血管内でがん細胞が生き残り、血管内を移動する、④がん細胞が血管外に出ていく、⑤がん細胞が新たな遠隔部位で増殖する。

【がんの転移と、それを助ける間質細胞】

 

「実は、がん細胞の身になると、転移の各段階を進んでいくのは、決して楽なことではありません。他の細胞の助けが必要になるのです」と、折茂准教授は説明する。例えば、血管の中は、がん細胞にとっては低栄養の環境で生存しにくい。加えて、生体の防御機構が働いてがん細胞にストレスを加えるといった具合だ。血管内に侵入したがん細胞がそこで生き残れる確率を計算すると、わずか1%以下になるという。このように、がん細胞が転移するのは大変なので、がん細胞の転移には、それを助けるものの存在が必要と考えられている。「それが、間質なのでしょう」と折茂准教授は予想している。

折茂准教授たちは、間質にあって、がんを促進する働きをする活性化線維芽細胞が、転移にも働くのではないかと考え、それを調べる実験に着手している。実験ではまず、転移の各段階で、CAFsががん細胞に与える影響を調べようとしている。がん細胞の中には、転移しやすいがん細胞(高転移性)と転移しにくいがん細胞(低転移性)が存在する。そこで、活性化線維芽細胞が、低転移性のがん細胞を強転移性に変えるかどうかを調べる計画だ。

【CAFsはがん細胞を低転移性から高転移性に変えるか?】

折茂准教授たちは、CAFsががん細胞を低転移性から高転移性に変えるかを調べようとしている。転移のしやすさは、がん細胞の増殖能、移動能、浸潤性、細胞死の起こりにくさ、細胞外基質を壊す能力、腫瘍開始因子として知られるがん幹細胞の能力、抗がん剤に対する抵抗性などを測定して、判断する。