研究紹介

インタビュー

組織中の細胞集団の秩序を形成するメカニズム

上皮細胞の細胞シートが極性化した個々の細胞からできているのであるから、細胞極性の異常が、細胞シートのかたちと機能に直結していることは容易に理解できる。「上皮細胞において、細胞の極性はもう一つ重要な役割を果たしています。それは、細胞分裂時の紡錘体の方向の制御です。これは分裂方向を決めます。細胞シートの細胞が分裂するときに、シートと並行に分裂した場合と垂直に分裂した場合とでは、結果が大きく異なることが想像できます。後者の場合、細胞はシートから押し出されてしまいます。」細胞の極性は、上皮細胞シートを構成する個々の細胞のかたちのみならず、その配置をも支配していることになる。

このことを証明するために、大野教授らは、aPKCやPAR3のノックマウスを用いた解析も進めてきた。「aPKCもPAR3も完全にノックアウトすると、生まれてくることができません。そこで特定の臓器や組織だけでノックアウトする方法をとりました。その結果、細胞の極性の異常に加え、組織のかたちの異常が様々な組織で見られています。細胞の重層化など前がん病変のような異常も見られています」
三次元的な組織や臓器のかたちに、ひとつひとつの細胞の極性が大きく関わることが証明されたことになる。

大野教授が目指すのは、aPKC-PAR3系がどのように細胞を極性化するか、それがどのように組織の異常に結びつくのか、という普遍原理の解明。「基礎研究ではありますが、必ずがん領域で役に立つと考えています」とも話す。

繰り返しになるが、現状では細胞や組織のかたちが遺伝子や分子の発現とどのようにリンクするのかがわかっていない。この部分が解明されれば、がん領域にとって大きなインパクトとなるにちがいない。


大野 茂男

PHOTO:大塚 俊
取材日:2015年11月30日