研究紹介

インタビュー

線虫受精卵の非対称分裂に必要な細胞極性化シグナル系aPKC-PAR3系の発見

上皮細胞の極性を決めている仕組みの解明は、全く異なる分野で行われていた研究とシグナル伝達系の研究が合流したことにより、大きく進むこととなる。

線虫の発生は、受精卵が非対称に分裂することから始まる。これが異なった性質を有する細胞を生み出す分化の起点であり、その方向性が成虫の前後軸を形成する。90年代の半ば、非対称分裂に必要な遺伝子として、PAR-1からPAR-6*の6種の遺伝子が同定された。「ここで興味深いことは、それまで細胞内に均一に分布していたPAR-3とPAR-1タンパク質が、精子の侵入を受けて、各々精子の侵入点の反対側の半周側の細胞膜裏打ち部位へ、侵入点側の半周の細胞膜裏打ち部位へと局在化するということです。」大野教授は語る。「PARタンパク質の線虫の受精卵の非対称分裂の前に、細胞が極性化し、運命決定タンパク質の非対称局在が起き、引き続いて分裂期紡錘体が前後軸方向に配向します。その結果、分裂に伴って、運命決定因子が非対称に分配される。これが、分裂により生じた二つの細胞が異なった運命をたどる仕掛けだったのです。」

ほぼ同じ頃、タンパク質キナーゼC*(PKC)の生理機能解明に取り組んでいた大野教授らは、PKCの一つであるaPKC(atypical PKC)と結合するタンパク質としてPAR3を同定した。そして、これをきっかけとして、aPKCとPAR3の複合体が、線虫受精卵の非対称分裂に働くことを見出したのである。


大野 茂男


注釈
【PAR】
Partitioning defective

【タンパク質キナーゼC】
タンパク質中のセリン、トレオニン部位のリン酸化を触媒する酵素の総称。