研究紹介

インタビュー

上皮細胞の極性

「部屋に天井や床があるように、細胞にも方向性があり、それを極性とよんでいます。例えば、生体の表層を覆い、外界と遮断する役割をもつ上皮組織は、細胞シート状のかたちを形成しています。ここで、各々の細胞は、明確な極性を持っています。」小腸の上皮細胞は、「内腔に接する粘膜側」と「血管に接する基底膜側」とでは異なったタンパク質が局在し機能も全く異なる。粘膜側は消化液に耐性をもち、栄養素を吸収する構造に、基底膜側は吸収した栄養素を血液中に運べるようになっている。このような極性をもったかたちがもたらされるのは、細胞内の成分の空間配置を決める仕組みがあるからであることが明らかとなってきた。

「極性化した上皮細胞の細胞内においては、細胞膜のレセプターなどのタンパク質をはじめ、細胞骨格系や詳報輸送系といった分子装置、核やオルガネラなどが、方向性を持って空間的に配置されています。ここでタンパク質分子や様々な細胞内分子装置の空間配置を決めているのがなんなのか、わからない状態が続いていました。」

「上皮細胞がシート状に秩序正しく整列したのが上皮組織ですので、上皮組織のかたち、ひいては臓器のかたちは、極性化したひとつひとつ細胞が決めていることにもなります」大野教授はそう話す。個々の細胞の極性が、その集団である組織や臓器のかたちと大きく関わるのだ。


【ゲノムの一次元の文字列の情報が三次元のかたちと向きをもつ組織づくりを指令する仕組み】
設計図 ゲノムDNA → 細胞 → 上皮組織(細胞シート)臓器(生体)| 一次元の文字列の情報 GATC--------- → 空間的なかたちと向き(極性)を持つ構造 → 特有のかたちと向きを持つ構造 | 極性化した細胞からなる上皮細胞シートが上皮組織のかたちと向きを規定する重要な要因である