研究紹介

インタビュー
さらなる抗がん効果の増強と安全の向上のために

今後の計画を中村准教授に伺うと、「いろいろなmiRNAを使い分けて細胞内でのウイルス増殖をうまく制御できれば、将来的にはいろいろながん細胞を特異的に死滅させることは可能だと思います。しかし、現在は、ウイルスを改良するたびにマウスでその効果と安全性を評価している段階で、その実用化にはまだまだやるべきことがあります。例えば、がんウイルス療法としての臨床応用を視野に入れた場合、ヒトに投与することができるGMPに準拠したウイルスの製造が必要不可欠となります」と耳慣れない単語が登場した。


GMPとは、Good Manufacturing Practiceの略称。「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準」と言い、安心して使うことができる品質の良い医薬品や医療用具などを供給するために、製造時の管理、遵守事項を定めた製造規範のことである。欧米の大学をはじめとする研究機関ではすでに定着しており、臨床研究用ウイルスのGMP製造施設が存在する。


しかし、わが国においてはこれまで施設がなかったため、欧米の研究施設の補助、あるいは企業(ベンチャーを含む)に依存する形でその役目を消化してきたのが実情である。この状況を打破すべく、GMPに準拠した臨床試験用ウイルスベクターの製造施設「治療ベクター開発室」が東京大学医科学研究所内に設置され、中村准教授もその開発室に昨年まで属していた。


中村准教授は、「ノウハウを蓄積してきましたので、実用化を目指して、セルバンクやウイルスバンクの作製、ウイルスの大量培養などGMP製造に必要な基盤技術の構築など、私にやれることから進めていきたいと思っております。より安全で効果的なウイルスを開発するための基礎研究、そしてそれを臨床研究へとつなげることによって、近い将来がん治療に貢献していきたいと思っています」と頼もしい抱負を語った。




中村 貴史(なかむら たかふみ)

TEXT:阿部芳子 PHOTO:荒井邦夫
取材日:2011年1月20日
更新日:2012年7月30日

注釈
【治療ベクター開発室】
患者に投与することができる品質をもつ細胞、ベクター、及びウイルス製剤の製造とそれを体系的に貯蔵を行うことができる施設。厳密なルールに準拠して、ベクター調整室、調製品保存室、品質管理室、機器動作監視室、材料品貯蔵・調製準備室に分かれ、24時間体制で管理されている。