研究紹介

インタビュー
made in Japanのワクチン、「ワクシニアウイルス」をがん治療に応用

幸運の1つ目は、JSTの『さきがけ』で中村准教授の研究テーマが採択され、若手としては比較的大きな助成を受けられることが決まったことだった。中村准教授は採択通知を受ける前後から、「これは麻疹ウイルスでなく、新しいウイルスを研究したほうがいいんじゃないか」と思い始め、しまいに「まったく日本独自の、made in Japanになるようなものを作ろう」と決心した。


幸運の2つ目は、「ワクシニアウイルス」を得たことだった。がんウイルス療法に適用できるウイルスを探していた中村准教授に、知り合いのウイルス学の先生から「面白いウイルスがあるから、それをがん治療の研究に使ってみてはどうか」と紹介されたのだ。これは、感染症に対するワクチン用のウイルスで、4半世紀前の日本国内で天然痘(痘瘡)ワクチンとして使われていたもので、重篤な副作用がなく、高い安全性が証明されている「純国産ワクシニアウイルスLC16m8」だった。


このワクシニアウイルスに、遺伝子組み換え技術でさらなる改良を加えれば、将来は“日本発の純和製抗がんウイルス製剤”として活用することができると、中村准教授は推測。2つの幸運を得て、「がん特異的ウイルス療法」の研究を立ち上げることができた。よく言われることだが、運を引き寄せる力というのもやはり本人の実力あってこそ。



中村 貴史(なかむら たかふみ)


注釈
【JSTさきがけ】
独立行政法人科学技術振興機構による若手研究者への研究助成システム。公募による研究テーマの選考が行われ、3年間の研究に取り組む。

【ワクシニアウイルス】
天然痘(痘瘡)ワクチンとして使われていたが、1980年WHOの天然痘根絶宣言の後は、非常用として一部で保管されているが、一般の予防ワクチンとしては使われていない。