研究紹介

インタビュー
幹細胞は分裂周期が遅く、休眠しやすく、目覚めると活発化する こうした異なる2種類の細胞を作る分裂のしかたを「非対称性細胞分裂」と言う。非対称性細胞分裂をする幹細胞の特徴の一つとして、1個は分裂周期が遅く進み(分裂が遅い)、他方は分裂周期が速く進む(分裂が速い)という性質を持っている。

森教授が「これは非対称性分裂の細胞を撮ったもので、面白いですよ。分かれるとき爆発したみたいに見えるんです」と実験画像を指さした。

非対称性制帽分裂

「がんの幹細胞は、もともとの1個は起きているのが苦手というか、眠るのが得意。そういうのが本当のがん幹細胞の特徴でしょうけど、2個に分かれたときの1個はまだその特徴を受け継いで冬眠しやすいタイプ。もう1個はどんどん活発に動いて、動き回るようなのを生み出して子分を作り出していくタイプ。そんなことが少し分かってきたのです」。森教授はまるでクマの冬眠のような表現で説明した。普通の細胞は日々細胞分裂していると言われているが、幹細胞は短いもので数日に1回、長いものでは数ヶ月に1回位の細胞分裂をするそうだ。

実験の結果、活発に分裂するタイプはわりと抗がん剤に弱く、ゆっくり分裂する細胞のほうが非常に抗がん剤に強いことも判明した。それが潜んでいる原因ではないかと……。

正常な骨髄の造血性幹細胞にも同じような性質があり、骨の中の尖った部分に細胞がくっつくと休眠状態になり、離れてしまうと細胞周期がどんどん回るというメカニズムが報告された。がん幹細胞でも同じような現象が起こる可能性が当然考えられ、潜んでいて何かの拍子に細胞が目覚めると、がんが大きくなっていくことが考えられる。

注釈
【遺伝子の着色による検証】
遺伝子の中には、幹細胞のときだけその遺伝子(特定遺伝子)を出していて、幹細胞でなくなった段階ではその遺伝子が消えてしまうものがある。つまり、この特定遺伝子がオン(存在)になっている間は幹細胞としての性質を持つけれども、オフ(消滅)になるとがん幹細胞でなくなる訳で、その特定遺伝子を着色することにより検証が可能になる。