研究紹介

インタビュー
私たちの体をつくる重要な細胞ー正常な幹細胞の働き 「がん幹細胞」に触れる前に、森教授から正常な幹細胞について伺うと── 私たちの体には「幹細胞」、英語でステムセル(stem sell)という非常に重要な細胞があるが、そもそも“幹細胞という言葉”は、いろいろな段階で使われている。

少し具体的にいうと、まだ人の形をしていない受精卵は、胃や脳や心臓など、どの部分にもなりうる能力があり、細胞分裂を繰り返すうちに心臓になったり、腸になったり、それぞれに分かれていく。そういう段階ではいろいろな部分になりうるという意味での「幹細胞」。限定した部分になってからは、例えば皮膚の場合、内側から新しい細胞が生まれ、外側(表面)にある古い細胞は日々はげ落ちてアカとなる。新しい細胞が生まれるということは、内側の下の方に新しい細胞を生み出す大もとの細胞がいるわけで、それが皮膚の「幹細胞」である。同じように胃にも食道にも大腸にも、それぞれに幹細胞がいて、私たちには見えないけれども、体のすべての部分に新しく作るための幹細胞が潜んでいる。

普通の細胞は、細胞分裂をすると自分とまったく同じ細胞を2個作る。また分裂すると4個できてまた……と分裂を繰り返していくが、すべて同じ性質の細胞になる。ところが幹細胞は、分裂したときに1個は自分と同じ細胞、もう1個は自分と違う細胞をつくる能力があり、ある時点でそれぞれの役割をする方向に分かれていく。
正常大腸と食道の幹細胞

注釈
【幹細胞】
英語stem sell。様々な種類の細胞の発生源となる細胞のこと。血液の細胞の場合は造血幹細胞である。複数の系統細胞に分化できる能力や、細胞分裂をして自己複製の能力、の2つを併せ持つ細胞。stem=幹から付けられた名称。