研究紹介

インタビュー
すべてのがんを退治できる黄金薬はないから、1つ1つのがんに向き合い治療薬を探索する

宮園教授がTGF-βの研究に出会ったのは、増殖因子PDGFの研究をしていたスウェーデンのウプサラ大学のヘルディン教授(現ノーベル財団理事長)のもとに留学したときである。当時主流であった増殖のシグナル伝達ではなく、逆の増殖抑制のシグナル伝達を研究しようとTGF-βの研究を始めたそうだ。それから約25年の月日を経て、TGF-βの研究は、がんや種々の病気の治療薬開発に発展するに至った。

宮園教授は今後の研究について、「技術の進歩によって1つ1つの細胞の詳細な解析ができるようになり、がん細胞は均一ではないことがわかってきました。私も、若くてエネルギーのある人たちとともに、次世代シークエンサーなどの新しい技術を用いて、何億個もある細胞1つずつのTGF-βの発現を調べるなど新しいことに挑戦していきたいと思っています。今後は肺腺がんだけでなく脳腫瘍や別のがん腫におけるTGF-βとがんの関係を研究していきたい。まだまだ研究は終わりません」と語る。

さらに「昔は1つの抗がん剤ですべてのがんを治せる特効薬がつくれると考えられていました。しかし、数多の研究により、がんの発生・進展・転移メカニズムはがん腫によってそれぞれ違うことがわかってきました。どのようにしてがんになるのかを1つずつ明らかにしていかなければなりません。小さな積み重ねが重要なのです」とがん研究に対する思いを話す。地道な基礎研究の積み重ねが新たながん治療として花開くまで、宮園教授はこれからも、着実に研究を続けていくことだろう。

宮園教授

TEXT:鈴木詩織・青山聖子  PHOTO:大塚 俊
取材日:2014年8月4日