研究紹介

インタビュー
進化するがん細胞の「複雑さ」を軍事偵察衛星のように暴きだしていく 現在、日本人の死因別死亡率のトップはがんで、3分の1の日本人はがんで亡くなっている。世界を見ても、人種や地域によってがんの種類は多少違うけれども、がんの発症率は高く、がん研究は人々の重大な関心事となっている。

がんは、無限に分裂をして、酸素と栄養があれば無限に増殖できる。膵臓がんなどは酸素がないところでも、どんどん増殖していく。酸素がなくても、別のエネルギー代謝のシステムを獲得しているから増殖ができる。胃がん、肺がん、大腸がん、……がん、どれも同じがん細胞のように思えるが、そうではない。がん細胞はその棲息環境にちゃんと適応できるように常に進化している。



宮野教授は数学者の感覚で、「がんはどれくらい複雑なんですか」という疑問を、老若を問わずがん研究者に投げかけてきた。答えはいつも「とにかく複雑なんですよ」というものだった。裏を返せば、がんはあまりに複雑な怪物で、まだ全貌を捉える方法がないということになるだろう。 どれくらい複雑かを知るために、試しに、「血管新生」というキーワードがある約4万6,000件の文献の中から、パスウエイと呼ぶ分子のネットワークが、どんなふうに動いて血管新生が行われているかという仕組みを調べて、そのネットワークの地図を作成した。込み入った鉄道ダイヤのような“地図”を示しながら宮野教授は、「まあ、これくらい複雑なんですね」と笑っている。

血管新生を操っている分子のネットワーク