研究紹介

脱ユビキチン化異常による、クッシング病発症のメカニズムに迫る!東京工業大学大学院 生命理工学研究科 生体システム専攻 駒田雅之 教授
ヒトの体は200種、60兆個もの細胞からなるとされる。生体としての機能が秩序立って維持されるのは、細胞分裂の時期と回数が個体レベルで厳密に制御されているからだ。駒田教授は、細胞分裂とは逆の「増殖を抑制する方向」にはたらく機構の解明を進め、その異常が脳下垂体に良性腫瘍ができるクッシング病を引き起こすことを突き止めた。

細胞増殖のブレーキに寄与するユビキチン化

細胞は、増えるべき時に、必要なだけ増殖するように、個体レベルで厳密に制御されている。増殖のためにはたらくのは増殖因子や成長因子などのタンパク質だが、細胞にはこれらの因子が過剰に作用しないように「活性を抑制するしくみ」も備わっている。駒田教授は、増殖が抑制される「増殖因子受容体ダウンレギュレーション」の分子メカニズムについての検討を行っている。たとえば、不要になった増殖因子受容体の荷札としてはたらく「ユビキチン」の付加反応や、ユビキチンを付けられた増殖因子受容体の膜輸送メカニズム解明などを続けてきた。

細胞は互いの様子を認識し合っており、必要に応じて増殖因子を産生し、細胞外へ放出する。増殖因子は別の細胞の膜上に存在する増殖因子受容体と結合し、受容体を活性化する。活性化された受容体は増殖シグナルを細胞内に伝達し、細胞分裂を誘導する。ただし、過剰な細胞分裂は、腫瘍形成やがん化を引き起こすため、細胞が必要数増えたところで、今度は、速やかに増殖シグナルを止める制御機構がはたらくようになっている。「活性化された受容体は、役目を終えて不要になったところでユビキチンの荷札が付けられ、速やかに分解ルートに乗せられるようになっているのです」。駒田教授はそう話す。


役目を終えた増殖因子受容体はリソソームで分解される


駒田雅之 駒田 雅之(こまだ まさゆき)
東京工業大学大学院 生命理工学研究科 生体システム専攻 教授

1988年 東京大学薬学部卒
1990年 東京大学大学院薬学系研究科 修士課程修了
1990年 関西医科大学肝臓研究所 助手
1996年 フレッド・ハッチンソンがん研究センター(米国シアトル)博士研究員
2000年 東京工業大学大学院生命理工学研究科 助手
2001年 同 助教授
2007年 同 准教授
2014年 現職