研究紹介

インタビュー

USP8の14-3-3結合配列変異とクッシング病

転機は思いがけないところからやってきた。ドイツでクッシング病の臨床にあたるチームから「患者17人から摘出した脳下垂体腫瘍について、USP8の14-3-3結合配列を調べたところ、6人に変異がみられた」と連絡があり、駒田教授らとの共同研究を求めてきたのである。クッシング病は、脳下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を産生する細胞にみられる良性腫瘍。腫瘍細胞から大量のACTHが分泌され、それが副腎皮質に作用して副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の過剰分泌を促すため、顔が過度にむくむ(ムーンフェース)、体幹部だけが肥満する(中心性肥満)、糖尿病、高血圧などのさまざまな症状を引き起こす。

日本には約1000人のクッシング病患者がおり、毎年、100万人に数人の割合で患者が発生するとされる。腫瘍が悪性化することはなく、取り除けば完治が望めるが、脳下垂体は頭部のちょうど中心部に位置するために手術がきわめて難しい。発症機構は未解明で特効薬はなく、厚生労働省が定める特定疾患(難病)に指定されている。

【クッシング病(神経外科医 Harvey Cushing により1932年に報告)】

駒田教授らはドイツ側からUSP8変異の詳しい情報を提供してもらい、14-3-3結合配列の変異がUSP8の機能におよぼす影響を詳細に調べ上げた。「患者のUSP8では、14-3-3配列のいずれかでアミノ酸置換や欠失がおきており、その部位は患者ごとにさまざまだということがわかりました」そうコメントする。つづいて、哺乳類の培養細胞に患者で見つかった変異USP8を作らせ、それぞれの14-3-3タンパク質との結合の有無、結合の強さなども調べた。

「4種類の変異USP8の酵素活性を試験管レベルで解析したところ、変異の種類によって活性上昇の程度に差があることがわかりました」。そうコメントする。駒田教授はこの時、変異USP8には正常USP8にない特徴があることに気づいたという。「変異USP8は分子内で切断を受けやすくなっており、よく切断される変異体ほど酵素活性が高くなっていたのです」