研究紹介

インタビュー

エンドソームの研究から脱ユビキチン化酵素へ

増殖因子が受容体と結合し、役目を果たしてリソソームに運ばれるまでにかかる時間は、わずか数時間ほどだという。活性化受容体を放っておくと細胞が過剰に増え、腫瘍やがんを引き起こす危険性が高くなるからだ。不要になった活性化受容体は、エンドサイトーシス(細胞膜の一部が細胞内に陥入して作られる小胞に、細胞の外にある物質が内包されて取り込まれること)によって細胞内に入り、エンドソームを経由してリソソームに輸送されて速やかに分解される。

このような受容体の不活性化(ダウンレギュレーション)は、ユビキチン化を解除するしくみ(脱ユビキチン化)によって抑制されうる。脱ユビキチン化を担う酵素は「脱ユビキチン酵素」と総称され、ヒトでは約90種が知られている。駒田教授は2005年以降、そのうちの一つであるUSP8(UBPYともよばれる)を対象に、構造と機能の解明を進めてきた。

「役目を終えた受容体の中には、LDL受容体のように、分解されることなく再び細胞膜に戻されてリサイクルされるものもあります。無害なものは使い回す方がリーズナブルだからでしょう。分解するべきか否かは、エンドサイトーシスの段階で、受容体にユビキチンの荷札が付いているかどうかで判断されています」。そう話す駒田教授はその分子メカニズムの解明に挑み、1995年に「エンドソームに局在し、ユビキチン結合ドメインをもつタンパク質Hrs」を突き止めた。

【エンドソームにおける増殖因子受容体の選別メカニズム】

活性化されユビキチン化された増殖因子受容体は、初期エンドソーム膜上でユビキチン結合性のESCRTタンパク質複合体群にトラップされてエンドソーム内腔に取り込まれ、最終的にリソソームに輸送される。


2000年には、Asaoらがエンドソームに局在するHrs結合タンパク質STAMを発見した。こちらには、脱ユビキチン化酵素と結合するドメインがあると報告された。「その脱ユビキチン化酵素がUSP8でした。当時はUSP8の機能についてまったく不明だったので、私たちも興味をもち、解析することにしたのです」。駒田教授は、当時をそう振り返る。


駒田 雅之