研究紹介

インタビュー
基礎研究の積み重ねが花開いたATL研究

ATLの研究の歴史はあまり長くないが、その間、日本が中心になって、ATLという病気の概念を打ち立て、原因ウイルスを発見し、研究を進め、数々の成果をあげてきた。「ATLの研究は、国のプロジェクトがよい成果をあげた好例だと思います」と神奈木教授はいう。基礎研究の進展には、当時の科研費の「がん特別研究」が大きく貢献し、抗体医薬の開発をはじめ、様々な治療法の開発につながった。

この流れを引きつぎ、がん支援では、「がん疫学・予防支援活動 (HTLV-1 研究分野)」が行われている。この支援活動では、ATLの疾患機序を解明し、ATLに対する有効な治療法や発症予防方法を確立するための研究資源の整備と、新たな診断・治療法の開発を支援している。これまで、新たな抗がん剤やウイルスに関連する抗体、ワクチンの開発などに貢献してきた。疫学研究と臨床研究・基礎研究を総合的に推進することにより、ATL治療と感染者の発症予防の実現を目指している。

「私自身、臨床から基礎へ転身し、基礎の立場で研究を続けてきました。しかし、本当に臨床現場へ届く研究にするためには、基礎と臨床の研究者が密接に連携することが必須であることを実感しています。このことはがん疫学・予防支援活動 (HTLV-1 研究分野)のコンセプトの1つとなっています」と、この支援活動の班長を務める神奈木教授は話す。

「HTLV-1の感染のしくみはわからないことが多く、発症予防への第一歩をなかなか踏み出すことができませんでした。長年の研究でようやくその扉が開いたところです。研究室では歴代の研究スタッフや大学院生たちが奮闘して基礎研究成果を編み上げてきました。そして、それがほんとうに臨床で通用し得る知見であるのかを検証する際には、多くの臨床の先生方が手を貸してくださいました。ワクチンの開発に当たっては九州がんセンターの末廣陽子先生がいっしょに熱心に取り組んで下さったことが大きな力となり、臨床試験まで到達しました。まだ道のりは長く課題はたくさんありますが、免疫療法で発症を予防することが必ずできると信じています」と神奈木教授は力強く語った。

神奈木 真理 教授

TEXT:佐藤成美 PHOTO:大塚 俊
取材日:2014年1月21日