研究紹介

インタビュー
いよいよワクチン療法を開発

こうして、長年の研究により、HTLV-1感染細胞を制御するしくみが明らかになり、ワクチン療法の開発が始まった。

ここまで述べてきたように、ATLの治療には、抗がん剤を使った化学療法や、CCR4に対する抗体医薬を使う抗体療法、インターフェロンを使った抗ウイルス療法が行われている。化学療法は即効性があるが再発しやすいため、化学療法の後、長期にわたる再発防止を期待して造血幹細胞移植療法が行われる。しかし、造血幹細胞移植には、時に重い副作用を起こす欠点がある。

そこで、ワクチンにより感染細胞を抑えることで、再発防止ができないかと神奈木教授らは考えた。そして、樹状細胞という免疫細胞を患者から取り出して増殖させ、上で発見したTax特異的CTLの主要なエピトープを、この樹状細胞にくっつけたワクチンを作製した。このワクチンによって感染者の体内でTax特異的CTLの働きを誘導し、感染細胞の増殖を抑えて、ATLの再発を防ごうとしている。

「九州がんセンター、東京医科歯科大学、九州大学の共同で、ワクチン療法の臨床研究が進んでいます」と神奈木教授。2012年から始まった予備的な臨床試験ではまずまずの成果が得られた。今後さらにワクチン療法の効果を確かめる本格的な試験も計画中だ。

ATLに対するワクチン療法の開発が成功すれば、その意義は急性型ATLの再発防止にとどまらず、その前段階とされる比較的進行の遅い慢性型やくすぶり型ATLにまで適応を拡大できる可能性がある。そして、さらに安全性が担保され簡便性が備われば、ハイリスクをもつ無症候感染者へのリスク軽減対策となる可能性もある。つまり、ウイルス抗原を標的としたワクチン療法は、ATL発症予防方法の開発への第一歩なのである。

【急性型ATLの治療方法】

ATLに対する治療法には、抗がん剤を使った化学療法、CCR4に対する抗体医薬を使った抗体療法、インターフェロンとAZTを使った抗ウイルス療法、それに造血幹細胞移植がある(AZTは、HTLV-1が自分の遺伝子を宿主細胞に読み取らせるのに必要な「逆転写酵素」の働きを阻害する薬でエイズの治療にも使われるが、核酸アナログとして抗がん作用もある)。これらに加え、現在、Tax特異的CTLの活性化を促す樹状細胞ワクチン療法が臨床試験段階にある。