インタビュー
発症リスクを左右するT細胞の応答性

HTLV-1の感染経路には、母から子へ母乳を通じて感染する垂直感染と、夫婦間や輸血による水平感染がある。垂直感染ではATLが発症するが、水平感染では発症はまれである。また、ATL発症者は、発症前からプロウイルスの量(感染細胞の中に組み込まれたウイルス由来の遺伝子のコピー数、感染細胞数を反映する)が多いことなどが疫学調査で示されていた。

「なぜ、感染経路によって発症のリスクが違うのでしょうか。このことについても、何らかの免疫抑制機構が働いていると考えました。そこで、感染経路を動物実験で再現して確かめてみました」と神奈木教授は振り返る。

動物実験では、ラットに感染細胞を口から飲ませた経口感染(垂直感染モデル)と腹腔内に接種した場合(水平感染モデル)とで、T細胞の応答や体内のプロウイルス量を比べた。その結果、腹腔内接種ではHTLV-1に特異的なT細胞の応答が認められたのに対し、経口感染ではほとんど見られず、体内のプロウイルスの量も腹腔内投与に比べて多かった。しかし、このようなラットでも、不活化した自家感染細胞で免疫するとT細胞の応答が回復し、プロウイルスの量は減った。

これらの実験から、HTLV-1に特異的なT細胞の応答の強さは感染経路により変わることがわかった。感染経路によって発症リスクが変わる原因は、T細胞の応答の違いであることがはっきりしたわけだ。さらに、T細胞の応答が弱く発症リスクが高くても、免疫で発症を抑えられる可能性があることも示された。

【垂直感染モデルの発症リスクの免疫による軽減】

HTLV-1を経口感染させたラットでは、HTLV-1特異的T細胞応答が非常に弱く、プロウイルスの量は多かった。免疫によりT細胞応答を回復させるとプロウイルス量は減少した。Cancer Sci. 102: 670-676, 2011から改変。