研究紹介

がん幹細胞を標的としたアカデミア創薬 大阪大学 大学院医学系研究科 癌創薬プロファイリング学 石井 秀始 特任教授 近年、がん細胞のもとになるがん幹細胞が注目されている。がん幹細胞はがんの転移や再発に大きく関わると考えられている。石井特任教授らは、代謝を制御することで、がん幹細胞を死滅させ、がんを根治する核酸医薬の実現をめざしている。アカデミアならではのシーズを薬にまで育てたいという強い思いがその背景にある。
国産の薬をつくる

新しい薬を生み出す「創薬」には、製薬メーカーなど営利団体による「カンパニー創薬」と、大学などの非営利団体による「アカデミア創薬」がある。この2つは対比して考えられることが多い。いちばん大きな違いは、カンパニー創薬では営利を追求するのに対し、アカデミア創薬では開発資金が公的資金によるため営利を追求しないということだ。そのため、アカデミア創薬では、リスクの大きい難病や希少疾患の薬の開発を積極的に進めることができる。また、アカデミア創薬は、病気のメカニズムを解析し、新たなシーズや革新的な技術をつくり出すことが得意だが、カンパニー創薬は、薬の候補の効果を検討するスクリーニングなど製品化に結び付けることが得意である。

【カンパニー創薬とアカデミア創薬の比較】

「薬を開発するまでには道のりが長く、途中には幾多の落とし穴があります。シーズの選定や最適化といった創薬はアカデミアが、見つかった薬の候補を育てる育薬はカンパニーが担当するというように、お互いに協力して薬を開発することが必要です」と石井特任教授は話す。アカデミア創薬とカンパニー創薬が連携して、国産医薬を一刻も早くつくるべきと考えるからだ。

がん創薬が進んでいる米国では、毎年20件以上の新医薬品が承認され、日本にもどんどん輸出されている。しかし、日本で開発された医薬品は、2012年の場合、わずか2件。対米貿易赤字の3分の1を薬や医療機器が占めている現状から、国産の薬を開発することが強く求められている。そうした状況の中、石井特任教授は、アカデミア創薬ならではのシーズ探索を進める一方、企業との連携にも力を入れている。

【医薬品開発の道のり】

開発の途中には、魔の川、死の谷、ダーウィンの海と呼ばれる落とし穴がある。これらを乗り越えて、医薬品の開発を成功させるためにはアカデミアと企業が連携することが重要である。

石井 秀始
石井 秀始 (いしい・ひでし)
大阪大学 大学院医学系研究科 癌創薬プロファイリング学 特任教授

1988年 千葉大学医学部卒業、同学部附属病院研修医
1992年 国立がんセンター研究所リサーチレジデント
1995年 放射線医学総合研究所研究員
1996年 米国トーマスジェファーソン大学研究員
2001年 米国キンメル癌センター助手、同センター講師
2002年 自治医科大学講師
2008年 九州大学特任准教授
2011年 大阪大学大学院医学系研究科消化器癌先進化学療法開発学寄附講座教授
2014年 大阪大学大学院医学系研究科癌創薬プロファイリング学特任教授