研究紹介

インタビュー
創薬から製薬に向けて

マイクロRNAは、核酸医薬の一種である。核酸医薬は、DNAやRNAなど核酸を医薬品として用いるもので、病気の原因となる遺伝子やタンパク質に直接作用する。治療効果が高く、副作用が少ないため、次世代の医薬品と期待されている。今はまだわずかしか認可されていないが、近年伸びている分野で、2025年には抗がん剤のシェアの4〜15%を占めるようになると考えられている。

石井特任教授らは、がんの代謝を制御するマイクロRNAをドラッグデリバリーシステム(DDS)によって標的細胞に届け、がん細胞を死滅させるという方法を開発している。DDSは、目標とする場所にだけ選択的に必要な量の薬物を届けるように開発した薬物投与システムで、薬物の構造を変化させたり、薬物を高分子のミセルに封入するなどの工夫が行われている。

DDSを使うと、マイクロRNAとDDSの相乗効果が生まれることもわかっており、新たなコンセプトの治療薬となることが期待されている。石井特任教授らは、目下、難治性がんである転移性大腸がんと膵がんの治療薬を開発対象としており、DDSの方法も検討している。

「マイクロRNAががんを抑えるメカニズムがだいぶ明らかになってきたので、今後は前臨床試験を目指します。実用化を急ぎたいのですが、核酸医薬は前例が少ないだけに、やるべきことはいっぱいあります。製品化までの多くの壁を乗り越えるため、ベースキャンプを設けながら、頂上をねらっているような気分ですね」と石井特任教授は話す。

石井特任教授が属す大阪大学には、アカデミア創薬のための体制が整っている。この利点を生かして革新的な薬を生み出し、がんを根絶したいと研究チーム一丸となって取り組んでいる。「たくさんの人の知恵が結晶化して薬が実現すると信じています。このような創薬活動の中で新しいがん幹細胞の原理を発見したい。そして、その原理を基に次の新しい創薬につなげていきたいです」と石井特任教授は力強く語った。

石井秀始 特任教授

TEXT:佐藤成美  PHOTO:大塚 俊
取材日:2014年9月2日