研究紹介

インタビュー
がん幹細胞の代謝異常

細胞はおもにグルコースを酸化分解してエネルギーを得ている。グルコースは細胞質で解糖によりピルビン酸に変わる。普通は、これがミトコンドリアでの好気呼吸によりさらに分解される。しかし、低酸素環境では、好気呼吸が行えないため、細胞は解糖でエネルギーを得るだけであり、その結果生じたピルビン酸は乳酸に変わる。これを嫌気性解糖という。

ところが、がん細胞は酸素が十分にあっても、嫌気性解糖を行う傾向がある。この代謝異常は、1931年にワールブルグ博士によって発見されたもので、ワールブルグ効果と呼ばれる。現在では、がん細胞の重要な特徴としてよく知られている。嫌気性呼吸だけではエネルギー産生効率が悪いので、がん細胞はグルコースをさかんに取り込む。PET(陽電子放射断層撮影法)では、がん細胞のこの性質を利用して、検査を行う。

「このようにがん細胞では代謝が異常になっています。そこで、がん幹細胞の代謝機構についても詳しく調べてみました」。がん細胞では、グルコースの代謝を調節するピルビン酸キナーゼという酵素が普通とは異なる形であることが知られ、それがワールブルグ効果を引き起こす大きな要因であると考えられている。石井特任教授らは、がん幹細胞を見分けるためのマーカーの開発に成功しており、これを用いてがん幹細胞だけを集め、解析した。その結果、がん幹細胞でも、ピルビン酸キナーゼが重要な役割を担うことがわかった。さらに、がん幹細胞では、グルコースだけでなく、他の代謝にも異常があることも明らかにした。

【現在の目で見たワールブルグ効果】

がん細胞でワールブルグ効果が起こる大きな原因は、解糖で働くピルビン酸キナーゼという酵素(PKM)が、普通の細胞中(PKM1)とは異なる形(PKM2)であることだと考えられている。