研究紹介

インタビュー
動く「動かぬ証拠」が開く新たな医学・生物学の時代

「これまでの研究では、ある事象を発見したとしても、再現できないまま議論になることがよくありました。細胞の動く前と動いた後のようすを観察し、現象の一部をとらえて考察しただけですから、しかたないのです。けれども、生体イメージングでは細胞の動きをリアルタイムで追うことができます。つまり、その現象を時系列で追うことができるので、動く『動かぬ証拠』となるわけです。これからの研究は形態学ではなく、動態学で評価することが重要になると思います」と石井教授は語る。

形態学とは、生物の器官や組織の観察から構造や形態を明らかにする学問だが、動態学では細胞の動きそのものを評価し、生態を明らかにする。石井教授は動態学という分野を切り開いていきたいという。生体イメージングは、細胞の世界のブラックボックスをのぞかせてくれる重要なツールだ。生体イメージングを駆使すれば、謎に包まれていたがん細胞の動きも明らかになり、がんのメカニズムの解明や、新たな治療法へとつながるだろう。

「約300年前に顕微鏡がつくられて小さなものが見えるようになったことで、微生物や細胞が発見されました。その後の顕微鏡技術の発展は、病理学に貢献し、病気の原因の解明や治療法の確立につながりました。可視化技術と医学の進歩は切り離せないのです。21世紀は生体イメージングの時代となるでしょう。私は生体イメージングでがん研究に新しい流れをつくっていきたいと考えています」と石井教授は結んだ。

【可視化技術と医学・生物学の歴史】

見えないものを見えるようにする可視化技術が、医学や生物学の発展に大きく貢献してきた。

石井 優 教授

TEXT:佐藤成美 PHOTO:大塚 俊
取材日:2014年9月2日