研究紹介

インタビュー
骨に潜む白血病細胞

骨髄の中の造血幹細胞の分化や維持を調節する特殊な微小空間を骨髄ニッチという。近年、白血病細胞のもとになる白血病幹細胞が骨髄ニッチにあり、細胞分裂を静止した状態でとどまっていることが指摘されている。そして、このことが、白血病が抗がん剤への抵抗性を示したり、再発したりする大きな原因になっていると考えられている。

骨髄ニッチには、骨髄の内骨の表面にあり骨芽細胞などからつくられる「骨芽細胞性ニッチ」と、血管の周囲で造血幹細胞などからつくられる「血管性ニッチ」があると考えられているが、骨髄ニッチの場所や構造などの詳細には不明な点が多い。さらに、白血病幹細胞はどのニッチにいて、どのような作用のもとに白血病細胞になるのかは明らかになっていない。

石井教授らは、生体イメージングによって白血病マウスの骨髄における白血病細胞の分布や動きをとらえた。その結果、発症初期のマウスでは、白血病細胞はすでに骨髄の周囲に分布していた。また、マウスに化学療法処理をしたところ、処理後も骨の中に白血病細胞がひそんでいた。「まだ結論は出ていませんが、白血病細胞は、血管性ニッチにいて血管周囲の細胞と相互に作用していると推察しています」と石井教授は話す。

白血病幹細胞が骨の中のどこにいるかを結論づけるためには、その細胞の位置情報が必要だ。しかし、生体組織には可視光が通らないため、蛍光で標識したところしか見えない。このため、イメージングにおいては、見たい白血病細胞だけでなく、血管や他の組織などまわりも標識して蛍光を発するようにしないと白血病細胞がどこにいるのかがわからない。ところが、現在、蛍光顕微鏡で区別できる色は4色しかないため、周りの組織が複雑な構造をしていても4色以上に色分けすることはできず、得られる情報が制限されてしまう。「これが複雑な生体ならではの難しさです。しかし、技術は進歩していますから、いずれは周りの組織の情報を含めた生体イメージングができるようになり、詳細が明らかになるでしょう」と石井教授は話す。