研究紹介

インタビュー
生体イメージングによる破骨細胞の新たな発見

まず石井教授が取り組んだのは、破骨細胞の観察だった。骨の内部には、古くなった骨を壊して吸収する破骨細胞と、骨を新たに作る骨芽細胞がある。破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成が互いに協調して働くことで、骨の組織は新しいものに置き換わっていく。このしくみを骨のリモデリングという。

石井教授らは、マウスを使って骨の内部を生きたまま観察することに世界で初めて成功し、緑に光らせた破骨細胞の動きをとらえた。破骨細胞は骨の内部から骨の表面に移動して骨を壊すが、その動きがどんな因子によって引き起こされるのかは、不明だった。それを、生きたままの骨で破骨細胞の動きを観察することで、明らかにしたのだ。

さらに、石井教授らは、破骨細胞で酸を出す装置が働いているときに赤い蛍光を発生するプローブを開発し、破骨細胞が骨の表面で酸を出し、骨を溶かしながら、吸収しているようすを観察することに成功した。そして、破骨細胞の中には「骨にへばりついて骨を壊している細胞」と、「骨の上をツルツルすべって骨を壊していない細胞」の少なくとも2種類があることを明らかにした。「これまでは、破骨細胞の数しかわかりませんでしたが、1つ1つの細胞の働きの違いを区別できるようになりました。いくら破骨細胞の数が多くても、働かない細胞ばかりでは破骨細胞としての役割は果たせません。生体イメージングにより、細胞の数だけでなく、機能まで含めて考えることができるようになりました」と石井教授は説明する。

【破骨細胞の機能の違いのイメージング】

破骨細胞には、活発に動き骨を壊していないと考えられる細胞(N型)とあまり動かず骨を壊している細胞(R型)があることがわかった。R型の細胞で赤く見えているのは、細胞が酸を出すための装置(水素イオンポンプ)。破骨細胞の機能はN型かR型かに固定されているわけではなく、様々な刺激によって変わることも、石井教授は明らかにしている。

続いて、骨芽細胞の動きや機能も生体イメージングにより観察した。これまで骨芽細胞は、破骨細胞とカップリングして(くっついて)機能していると考えられていた。「ところが、実際の細胞の動きを見てみると、細胞どうしがくっついているようすはないのです」と石井教授はいう。破骨細胞の集まっているところと骨芽細胞の集まっているところの境目を観察し、詳細を調べたところ、骨芽細胞と破骨細胞はくっついたり、はなれたりしており、一部がつながっているシナプスのような構造だった。

生きたままの骨をイメージングすることにより、従来の概念を覆すような発見が次々に生まれている。こうした発見は、関節リウマチや骨粗鬆症などの新たな治療薬の開発につながると期待されている。