研究紹介

インタビュー
MMPの機能は、がん細胞の働き方に深く関与している

MMPという酵素群は、造血系細胞を中心に多くの細胞の中に存在しているもので、がん細胞の中にも同じように存在している。がん細胞がどこか他の場所へ行こうとするときもMMPを分泌して細胞外基質を溶かし、別の細胞に入っていったり、ときには血流やリンパ液に乗ってMMPによって開かれたルートを通じて移動する。これががんの浸潤や転移である。ハイジッヒ准教授いわく「がん細胞は血液の細胞にすごく似ているところがあります。がん細胞の転移では、血液やリンパ液の中へまず移動し、それから長い道(血管)、体の中を動かなければいけないので、正常の細胞と同じようにMMPという酵素の機能を使う必要があるのでしょう」と細胞が旅をするような表現をした。ハイジッヒ准教授の話し方は、難しい酵素の話も親しみやすく感じられるから不思議だ。とても快活な口調にこちらも思わず身を乗り出してしまう。


また、MMPについて「この酵素の興味深いところは、多くの種類が存在することと、タンパク質の分解だけでなくさまざまな役割をもっていることです。細胞同士の接着を解除するだけでなく、例えば、他のタンパク質(サイトカイン)を切り離してその形式を変換したりもできる。そうして分子の元の性質(機能)を変えてしまうんです」と言う。


さらに「がんを考えるとき、がん細胞はまず増えようとします。そのためにも、いろいろなタンパク質が必要です。がん細胞の場合は、増殖因子をがん細胞自身が出して、それが細胞自身を刺激してくれる。つまり、細胞は自分を刺激してくれるシグナルを出したりできるので、MMPは別の働きをもつ分子の放出とかの機能も助けるんです。そうしてがん細胞は増殖していくのです」と解説した。MMPという酵素群は、組織の発生や発達(ハイジッヒ准教授はdevelopment と表現)でよく活躍するプロテアーゼで、特にがんにおいて浸潤したり転移したりするときは活性化して大量放出するのだそうだ。


血液線維素溶解系因子群によるMMP活性の制御