研究紹介

インタビュー

がん幹細胞の特徴──冬眠して再活性化して再発へ

もう1つの主題であるがん幹細胞について、後藤准教授は「幹細胞における自己複製能は、自分が増えるだけでなく、もう少し分化した細胞も作ることができる。分化した細胞は、幹細胞よりも増殖能力が高く、また、増殖因子のシグナル伝達の力の強さによっていろいろな状況になります。ただ、幹細胞そのものは増殖能が低いので、冬眠しているとも言われるくらいゆっくりしているのです」と、幹細胞の特徴を説明した。

がん幹細胞の概念については、後藤准教授によれば「5年ぐらい前までは、がん組織は増殖能力の高い同じような細胞が自己複製した集まりであると考えられていました。今は、がん幹細胞が何かというのはまだ証明されていないけれども、正常の幹細胞あるいは少し分化した前駆細胞のゲノムのDNAに突然変異が起きたりして、周りの制止を振り切って勝手に自己複製してしまうような変な細胞、それががん幹細胞と考えられている」そうだ。

これまでに分かったことが幾つかある。実はがん幹細胞は自分一人ではあまり増えられない。冬眠してそのままという場合もある。周りにニッチ細胞があると非常に元気になる。しかも、通常の組織幹細胞は自分でニッチ細胞を積極的には誘導しないが、がん幹細胞は他の組織や生体全体のことを考えずに利己的にニッチ細胞を誘導してしまう。ニッチ細胞は誘導されて自己複製し、分化した細胞がわーっと増えて大きいがん組織ができるのではないか、と。

従来の化学療法や放射線治療は、増殖性が高いという理由から、がん組織の中心でなく周りの細胞をターゲットにしていたそうだ。周りの細胞は一時的に非常によく増えるが、分化しきってしまうと細胞増殖をやめてしまう。そういう細胞を殺すとがん組織は縮小するので、一見よくなったような形になるが、実はがん幹細胞は生き延びていて、どこかで冬眠状態になっている。何年か後に、またDNAに変異が入って再活性化すると、ニッチ細胞とがん幹細胞がいろいろ相互作用して再び増殖能が高まってくる。これが再発と考えられている。結局、がん幹細胞がなくならないことにはがんの再発は避けられない、ということが明白である。