研究紹介

インタビュー

新規BRCA1結合分子であるOLA1の同定に成功

千葉教授が開発したBRCA1の機能診断法は、臨床医としての経験を基礎医学の研究に生かした成果のひとつといえる。
「BRCA1は、BARD1(BRCA1-associated RING domain protein 1)と二量体を形成し、E3ユビキチンリガーゼと活性を示し、DNA修復及び中心体制御において機能することが分かっています。家族性乳がん由来のBRCA1変異体には、BARD1との結合が消失するものがあることから、BARD1はBRCA1のがん抑制能に重要な働きをもっていることが予想されます。


【BRCA1(Breast Cancer Gene 1)】

家族性乳がん由来のBRCA1変異体には、BARD1との結合が消失するものがある。


そこで千葉教授は、BARD1のC末端に結合するタンパク質を探索し、OLA1(Obg-like ATPasa 1)の同定にも成功した。 「BRCA1の研究は多くの人がやっていますが、私が選んだのはBRCA1と結合するBARD1を探してその機能を解析したことでした。さらに、これに直接結合する分子であるOLA1(Obg-like ATPase 1)を同定することができました。この分子の機能解析を行ったところ、がん由来の変異ではこの機能が破綻してしまい、中心体数が増加することがわかったのです」*


【OLA1の乳がん細胞由来の変異】

千葉教授によれば、OLA1はBARD1のC端末に結合するタンパク質で、これまでも悪性腫瘍での高発現や変異が報告されていたが、その詳細な機能は明らかになっていなかったという。このOLA1は中心体と紡錘体極に局在していて、BRCA1を抑制すると中心体が増えるのと同様に、OLA1も発現を抑制すると中心体の数が増加することがわかったという。

「OLA1がBARD1に加えて、BRCA1とも直接結合してコンプレックスをつくっていることもわかりました。γ-tublinという中心体の重要な構成因子でマーカーにもなっているものがあるのですが、これとも結合していることがわかったのです。現在は、OLA1とその関連分子の中心体制御機構についてさらに解析を進めています」

さらに未発表の段階であるが、千葉教授はOLA1の新たな結合分子も同定しているという。この分子は乳がんの転移・浸潤を促進することや、予後が不良な乳がんに大いに関係するとみられている。

「現在、ノックアウトマウスによる解析も進めているところです。また、DNA修復に関与すると考えられているBRCA1が中心体でも重要な働きをするということから、DNA損傷応答と中心体との関連についても今後検討していきたいと思っています。修復できないほどのDNA損傷が起きてしまった場合にこの分子メカニズムを解明することにより、新しいがん治療の標的を探索できるのではないかと考えています。」


千葉 奈津子


注釈
【この分子の機能解析を行ったところ…】
Molecular Cell, 2014